これは2001/06/28に放送された内容の紹介です。
東海ラジオ 放送時間AM6:30〜9:00 私の放送時間7:00〜7:10
パーソナリティ:松原敬生、アシスタント:山崎聡子
松原:さあ、朝いちアラカルト、今日も電話に出て頂いております。電話の向こうのお客様ご紹介しましょう。
山崎:はい、味覚修飾植物の研究では東海3県下で第一人者でいらっしゃいます島村光治さんに電話の向こうにおいでいただいております。
松原・山崎:島村さん、おはようございます。
島村:おはようございます。
松原・山崎:宜しくお願いいたします。
島村:宜しくお願いします。
松原:私、耳なじみがないんですが、味覚修飾植物。。。これは普通の植物なんですよね。
島村:そうです。植物なんですが、味覚修飾植物というのは食べ物の味を変えずに、舌にイタズラをして一時的に味覚を変化させる物質を持つ植物で、甘味誘導物質と、甘味阻害物質の2種類に分かれております。
松原:ウ〜ン。ということは、その植物を、例えば、なめると次に食べるものの本来持っている甘味が消えてしまったり、甘味が増すということになるのですか?
島村:おっしゃる通りです。
松原:はあ、でも味覚修飾植物ってねえ正直に言ってね島村さん、我々、学校の生物の時間に習いました?
島村:習ってないと思います。
松原:習ってないですよね。島村さんを紹介するのに、まず、会社員でいらっしゃって、これを専門的になさっているわけではないんですよね。
島村:そうです。味覚修飾植物の研究はプライベートで実施しております。
松原:本業の方は、日本ガイシに勤めていらっしゃって、セラミックスの研究をなさっていらっしゃる島村さんですよね。
島村:そうです。
松原:まず、それが前提に合って、じゃあ、プライベートで味覚修飾植物とどういうお付き合いが始まったんですか?
島村:私が16歳のとき、本を読んでまして、ミラクルフルーツという植物を知りました。
松原:ミラクルフルーツ。
島村:はい、ミラクルフルーツというのは、その果実を食べた後に、酸っぱいものを食べると甘く感じる果物なんですけれども。。。
松原:このミラクルフルーツ、我々の身近にあったんですか?
島村:当時としては極めて珍しい植物で、日本でもほとんどありませんでした。
松原:それは、たまたま島村さんの回りにはありましたか?
島村:いいえ、なかったもんですから、私は当時秋田県に住んでおりまして、関東地方より何とか入手することに成功しまして、そこから栽培の研究を始めたのですが。。。
松原:えっ、それって学生時代でしょう?
島村:そうです。16歳のときです。
松原:16歳でしょう。高校を出たてのときでしょうか?
島村:高校に入ったときです。
松原:あっ、ごめんなさい。入ったときですか。入ったときに、しかし、取り寄せるなんてそういう好奇心を行動に移してしまう島村さんなんですね。
全員:(笑い)
松原:びっくりしますね。栽培までしようという。。。
島村:当時としては栽培技術を知っている人はまずいませんで、私も研究を始めまして、失敗しながらもなんとか育てることに成功しました。今では、植物園さんにも指導に行ったりもしています。
松原:なるほど、なるほど。でもまだ、島村さんお若い、27歳でいらっしゃるから、わずか11年前のことなんですよね。
島村:そうです。
松原:で、そのミラクルフルーツというのは味覚修飾植物の代表なんですか?
島村:そうですね。他には、クルクリゴといって、これもミラクルフルーツと似ているのですが、この果実を食べた後に酸っぱいものや水を飲むと甘く感じます。また、ギムネマといって、その葉っぱを食べてから甘いものを食べると甘さを感じさせなくなります。
松原:まさに味覚を変えてしまうんですけれども、ちょっとおさらいで勉強しますが、味を感じる仕組みは、我々人間はどうなっていますか?
島村:私たちが味を感じるメカニズムは、簡単に言いますと、鍵と鍵穴の関係に例える事ができます。つまり、味の成分が鍵で、舌のセンサーが鍵穴です。ですから、甘味で紹介しますと、甘味は甘味のセンサー(甘味の鍵穴)に入って、はじめて、脳に甘いという味が伝わるわけです。
松原:なるほど、鍵と鍵穴の関係ですか。そうするとなぜ、味覚修飾は起こるのでしょうか?
島村:ギムネマについて紹介しますと、葉っぱに含まれている成分、ギムネマ酸といいますが、舌の甘味の鍵穴を全部ふさいでしまいます。ですから、その後に甘いものを食べても甘さが感じなくなるわけです。また、ミラクルフルーツは、ギムネマよりはメカニズムが複雑なんですが、ミラクルフルーツに含まれているタンパク質が舌の甘味の鍵穴にくっつきます。それだけでは何もイタズラをしないのですが、酸っぱいものが来ますとタンパク質が反応しまして、舌の甘味の鍵穴を強く刺激します。ですから、酸っぱいものを食べているにもかかわらず、甘く感じるわけです。
松原:これはイタズラの部分では大変おもしろいのですが、それを応用していこうと話を広げられているようですが。。。
島村:ミラクルフルーツを例にあげますと、ミラクルフルーツは酸っぱいものを甘く変えるわけですから、ダイエットや糖尿病の方への適用を挙げることができます。
松原:では、具体的にそういう行為をなさっているわけですか?
島村:私ではないんですが、名古屋市のお医者さんが私の以前の新聞記事をご覧になって、連絡してくださいました。現在糖尿病の患者さんに試験的に行っております。
松原:そうすれば、実際患者さんは酸っぱいものを召し上がっていらっしゃるのに、甘く感じて食べてると。。。
島村:そうです。ですから、甘いものを食べたいという欲求は満たしており、なおかつ、体内には糖分は摂っていないわけです。
松原:ということですよね。これはメカニズムをさらに発展させますと、すごいことが起きそうな気がしますが。。。さあ、そんな新聞記事でいま話が出ましたが、島村さんのお話が出るたびに、いろんなところからちょっとお話をお願いしますと、講演活動がたいへんお忙しいそうですね。
島村:そうですね。私は本業は日本ガイシでございますので、仕事に合間を縫ってという形になりますが、ボランティアで学校向けや一般向けの試食付きの講演を実施しております。
松原:その際に、子供たちを相手にすることもあると思うのですが、いま、子供さんたちにね、一番伝えたいといいますか、どういうことで時間を共有したいですか?
島村:私は研究所に勤務しているということもあり、今の若者の科学離れは非常に深刻な問題と考えております。自分の五感で実感し、植物を通じて、科学への興味や自然の奥深さ、不思議を感じていただければと講演を引き受けております。
松原:なるほど、実際に味覚修飾植物、例えばミラクルフルーツを皆さんに召し上がってもらうことがあるんですか?
島村:講演ではギムネマとミラクルフルーツを参加者全員に試食していただいております。
松原:ええ、ええ。それでまた、こんど次のものを食べたときに、チョコレートを食べたりして味が変わるわけですね。どんな反応ですか?
島村:皆さん驚かれますけど、特に子供達の反応は見ていてこっちが楽しくなるくらいです。
松原:そうでしょうな。実際にミラクルフルーツやギムネマは我々も手に入れることができるんでしょうか?
島村:味覚修飾植物自体は植物園や大学の植物学の研究室にある程度です。基本的には売っているものではありませんが、ただ、ミラクルフルーツに関しては手に入れても、非常に栽培法が難しいです。
松原:そうすると、これらは島村さんの講演を聴かないとなかなか体験できないですね。
島村:そうですね。もし、試食されたい方は私の講演会に来ていただければと思います。
松原:その講演会のスケジュール的なことも含めて、味覚修飾植物について、島村光治さんのホームページがあるそうですな?
島村:そうです。今ホームページを持っておりまして、検索の仕方はキーワードを2つ入れていただきたいのですが、『島村』と『ミラクルフルーツ』という2つのキーワードを入れて検索していただければ出てくるはずです。
松原:『島村』、『ミラクルフルーツ』。この2つの言葉を検索に使えばいいわけだ。
島村:そうです。
松原:いやぁ、私、このダイエットという5文字に惹かれておりまして、いっぺん島村さん、早速ホームページを開けてみたいと思います。
島村:ありがとうございます。
松原:あの、僕、すばらしい研究につながっていくと思いますんで、ますます奥を深めて下さいまして、そして、子供たちに興味を持たせるということ、この『不思議』って大事だと思うんですよね。その部分をまたお伝えいただくように、僭越ながらお願いしたいと思います。
島村:はい。
松原:どうも今日は朝早くからありがとうございました。
島村:どうもありがとうございました。
松原:頑張ってください。どうもありがとうございました。味覚修飾植物、耳慣れない言葉ですが、ちょっと分かった気がしました。今日は東海3県下で第一人者の研究者、島村光治さんに伺いました。