味は食べ物が唾液と混ざって水溶液になることで感じられるけれど、食べ物を舌の上にのせただけでも味を感じるのはなぜだろうと疑問に思いました。また、ミラクルフルーツに含まれる、酸っぱい物を甘く感じさせる「ミラクリン」というタンパク質が、他の植物にはないのかということも気になりました。
島村先生が16歳からミラクルフルーツの研究を始めたと聞いて、実物をどのように手に入れたのか知りたいと思いました。西アフリカ原産で、日本では知らない人も多いとおっしゃっていたので、研究を始めるまでの経緯にも興味がわきました。
また、ギムネマの効果がいつごろ発見されたのか、そしてギムネマ自体が少し苦かったことから、昔の人は毒として認識していなかったのかという疑問も生まれました。ギムネマの実験でチョコと砂糖を選んだ理由についても知りたいです。
ミラクルフルーツのタブレット化が成功した今、島村さんが次に研究するものは何なのか、ミラクリンの人工合成なのか、とても気になります。ミラクルフルーツがもっと一般的になれば、小学生の夏の自由研究のテーマにもなりそうだと思いました。そうなれば、味覚に興味を持つ子どもがもっと増えるのではないかと感じました。
島村のコメント
とても鋭い質問をたくさんありがとうございます。
まず、食べ物を舌の上にのせただけでも味を感じるのは、舌の表面がすでに唾液で湿っているからです。食べ物に含まれる味物質が唾液に溶け、その情報を味蕾にある味細胞が受け取ることで味を感じます。
ミラクルフルーツに含まれるミラクリンと同じような働きをする物質を持つ植物がほかにないのか、という疑問も非常に良いところに気づきました。世界にはミラクルフルーツ以外にも味覚を変化させる植物があり、私はこれらを「味覚修飾植物」として研究してきました。ただし、植物によって含まれる物質や味覚への作用は異なります。 私がミラクルフルーツに興味を持ったのは16歳のときです。当時は現在のようにインターネットで簡単に情報や植物を入手できる時代ではありませんでした。その中で、文献を調べたり実物を探したりしながら研究を続けてきました。実物をどのように入手したのかについては、研究を始めた当時のエピソードも含め、講演でもお伝えしたと思いますが、関東地方で初めて入手に成功しそこからの研究スタートになります。
ギムネマについては、甘味を感じにくくする性質が最近発見された植物ではなく、インドでは古くから知られてきました。「ギムネマ・シルベスタ」の現地での呼び名には「グルマール(=砂糖を壊すもの)」という意味につながるものもあります。ギムネマ自体の苦味と毒性は別の問題ですので、「苦い=毒」とは限りません。 実験で砂糖やチョコレートを使うのは、ギムネマを体験する前後で「甘味が感じられなくなる」という変化を自分自身で比較しやすいからです。特にチョコレートは、甘味がなくなると普段とは異なる油脂などの感覚が目立つため、「おいしさは甘味だけで決まっているのではない」ことにも気づくことができます。
そして「次に何を研究するのか」「ミラクリンを人工的につくるのか」という質問は、研究者に対する質問としてとても面白いですね。私はミラクルフルーツそのものだけでなく、味覚修飾植物をどのように人の生活や食育に役立てられるかということにも関心を持って研究・活動を続けています。
そのため、自分自身ではミラクリンの合成は行いません。
最後の「小学生の自由研究に使えば、味覚に興味を持つ子どもが増えるのではないか」という発想は、まさに私が体験型の味覚教育を続けている理由にもつながります。知識として聞くだけではなく、自分の舌で「なぜ?」を体験することで、そこから新しい疑問が生まれます。今回これだけ多くの疑問が生まれたこと自体が、体験から科学への興味が広がった証拠だと思います。