2023/5/29に実施した中京大学心理学部3・4年の皆さんのレポートです。
Aさん
講義を通じて、経験することの重要性を感じた。私は以前からミラクルフルーツやギムネマについて知っていた。しかし、実際にそれらの効果を体験したのは、今回が初めての経験だった。実際にミラクルフルーツとギムネマを体験したことで、知識を経験に上手く昇華させることができたと思う。一般に意味記憶よりもエピソード記憶の方が、覚えが良いとされている。そのため、エピソードとして味覚について学べたことは有意義だったと思う。もちろん講義の内容そのものにも重要なポイントがいくつもあった。私が最も興味を抱いた内容は、動物毎の味覚の差異についてだ。毒草を判別しなければならない草食動物は味蕾の数が多く、一方で特定の動物のみを捕食する肉食動物は毒を考慮する必要がないため、味蕾の数が少ない。さらに、一部の動物は独自の進化を遂げて、味覚を上手に活用している。これらのことは私にとって新鮮な内容だった。味覚はただおいしいという体験を経験するために存在するものではないのだと、知識をバージョンアップすることができた。
味覚修飾植物の今後の展開としては、食育の現場での活用の普及が考えられる。上述した通り、 経験することは学びにとって重要だ。だが、現状、味覚については、経験はおろか、授業や講義で学ぶ機会さえほとんどない。神経生理学のテキストを例にすれば、視覚や聴覚を解説しているページ数が10ページ以上あるのに対して、味覚は見開き1、2ページで完結しているものがほとんどだ。また、 衣食住という言葉があるように食は生活の基盤であり、食の充実は生活の質を向上させる。そして、 食の充実に直結する要因が味覚だろう。味覚と学習の関連についてはコーヒーやビール、ピーマンを例に講義の中でも触れられていた。以上のことから、学習を深めることで、味覚についての理解が深まり、その結果、食や生活の充実に繋がるということは明らかだ。この事実が広まれば、味覚修飾植物の教材としての活用は今後益々普及していくだろうと私は考える。
家に帰ってから、ギムネマをもう一度試した。講義内では、グラニュー糖とチョコレートだけで、 他の甘い物でも同様の結果になるのかまだ半信半疑だったからだ。家では上白糖、キシリトールガム、ハチミツで実験した。上白糖を用いたのは、砂糖の粒の大きさの違いの影響を、キシリトールガムを用いたのは、砂糖以外の甘味料でも同じことが起こるのかを、ハチミツを用いたのは、
単糖類でも同様の結果になるのかをそれぞれ調べるためだ。実験の結果、すべての物で甘みを感じなかった。このことから粒の大きさも、甘味料の差も、分子構造の違いも関係なく、甘みを感じないことを改めて実感することができた。ただし、砂糖が砂のように、ガムが噛み終わった後のように感じられた一方で、
ハチミツだけは例外的においしいと感じることができた。このことにはハチミツの不純物の多さが関係していると思われる。実際、 ハチミツの成分を砂糖と比較してみると、ハチミツには砂糖には含まれない無機質やビタミンが含まれていることがわかる。ハチミツのおいしさは、
糖だけではなく、含有する複数の要素が絡み合って演出されているものなのではないだろうか。そこには当然、 味覚以外の感覚の影響もあるだろう。
今回の講義を通じて経験の重要性や生物にとっての味覚の意義について学んだ。加えて、味覚修飾植物の食育現場での活用やハチミツのおいしさの理由について考えるきっかけとなった。講義での学びは、必ず生活に役立つはずだ。惜しむらくは、中学生くらいの頃にこの講義を受けたかった。
参考 文部科学省 (2023) 『日本食品標準成分表 (八訂) 増補2023年第2章―3砂糖及び甘味料』
島村のコメント
家に帰ってから色々な食材でギムネマを有効活用いただいたようで何よりです。それぞれの甘さの違いを意識して食材選択した点は素晴らしいと思います。ハチミツはご記載の通り、糖以外の成分量が多いため、味を感じることができたものと考えます。
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Bさん
今回の講義を通して、私は人間にとって味覚が非常に重要な機能であったと気づかされました。加えて、味覚修飾植物は私たちに、味覚の重要性や、味覚を通して味を感じ、食事ができていることのありがたみを再認識できるきっかけの1つになるのではないかと考えました。
私は講義の受講前も人間にとって五感が必要不可欠な感覚機能であることは理解していました。視覚や聴覚が機能しない世界は、目を閉じたり、耳をふさげば、簡易的ではありますが手軽に疑似体験をすることができるため、その度に真っ暗で音がない世界は怖いと感じ、視覚や聴覚の重要性を実感していたからです。一方で、味覚に関しては、視覚や聴覚のように一時的に感じない状況を作り出すことは難しく、日常生活の中で味を感じたくないからと言って気軽に味覚を感じない状態にすることはできません。つまり、味覚は五感の中でも、機能しない世界を想像しにくく、味覚の存在を当たり前だと感じている人が多いのではないかと感じました。
五感生活研究所が行った、五感のうち最も関心のある感覚を回答するアンケートによると、味覚は最も人々からの関心がなく、9%という結果でした。これは、私のように、味を感じるのは当たり前だと感じ、味覚がある生活に慣れてしまっているからではないかと考えました。そのため、私は今回の講義で体験したように、いきなり味覚の仕組みを学ぶのではなく、ギムネマやミラクルフルーツを食べると、砂糖が砂のように感じたり、甘いはずのチョコレートが苦く感じたり、本来は酸っぱくて食べられないはずのレモンがおいしくて何個も食べてしまうといった経験とともに学ぶことで、味覚の重要性や、味覚の存在が自分の生活を豊かにしてくれていることに気が付けるのではないかと考えました。また、これらをきっかけに、味覚の仕組みや“食”自体に関心をもつことができるのではないかと考えました。
したがって、私は、味覚修飾植物は私たちが普段当たり前だと感じ、重要性を忘れてしまっている味覚に再度関心を持つきっかけを与えてくれる存在だと感じました。そして、味覚の仕組みや味覚修飾植物が多くの人々に知られれば、糖尿病など病気の治療の際にも、味覚修飾植物を患者の方にも抵抗なく使用していただけるのではないかと考えました。
参考文献 五感生活研究所. “五感のアンケート”. 五感生活研究所. http://www.yuzumi.com/5SENSE/enquete.html.
(参照 2023-06-01)
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Cさん
今回の味覚についての講義では、食べ物のおいしさは味蕾によってのみ決まるわけではなく、心理的な要因や環境的な要因によって感じることを知った。これまで、食べ物の味は味蕾が感知することによって知覚されると考えていたが、「おふくろの味」のような慣れた食文化や、安全性や評判などの情報による影響もあることを知り驚いた。また、味に関係する価値も、島村先生のワインのお話にもあったように、安価なものは誰にでも好まれる味であることに対し、高級なものは熟練者のみが味の良さを感じられるものであり、単に味が良いだけでは価値は決まらないのだと感じた。おいしさに関する心理的な影響としては、食事が楽しいと感じられることが印象に残った。食事のときに楽しいなどとポジティブな心理状態になることによって、食事の味もおいしさのある味になっていくのであれば、子どもの頃の食事では楽しさを感じることがその後の食生活にも良い影響があるのではないかと考える。反対に、食事の際にネガティブな経験をすることによって嫌いな食べ物ができてしまうということであり、おいしさ、そして食事と心理との関係は自分が考えていた以上に大きいと感じた。そのため、孤食やコロナ禍における黙食のように、食事の際に楽しさを感じられない問題は食のおいしさに関して悪い影響をもたらすのではないかと感じた。
味覚修飾植物については、島村先生の講義で挙げられていたように、糖尿病患者向けのミラクルフルーツの活用の可能性に興味を持った。糖尿病では甘い物を好きなだけ食べることはできず、制限が必要であるが、先述したように食事と心理的な関係は大きいため、甘い物を我慢しなければならないことは非常にストレスになると考える。その場合に、酸っぱいケーキなどの本来甘い物であるが甘くない食べ物をミラクルフルーツと一緒に食べることで、甘い物を食べていると知覚することができ、良い心理状態にもなると考えられる。こうして、身体的健康と精神的健康の両面から健康対策を行うことができると考える。しかし、ミラクルフルーツなどの味覚修飾植物は原産地が海外であるため、新鮮な味覚修飾植物を大量供給することは難しいと考える。この点に関して、江面(2014)の研究では、味覚修飾植物が持つ物質を他の植物で代替することを試みている。江面(2014)は、ミラクルフルーツが持つミラクリンの代替のために、ミラクリンを蓄積する組替えトマトを開発することによって、大量供給が難しいミラクルフルーツをトマトで代替する研究を行っている。この江面(2014)の研究のように味覚修飾植物を研究することで、味覚修飾機能の実用化のための研究も進むと考える。そして、味覚修飾機能のある物質を健康増進等のために用いることで、その礎となる味覚修飾植物の可能性もさらに広がっていくと考える。
参考資料
江面浩(2014). ヒトの健康増進を目指したミラクリントマトの研究開発.
生物工学会誌/日本生物工学会 編92(10), 540-544.
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Dさん
私が今回の授業を通して一番印象に残っているのは、生物それぞれの生活環境によって味蕾の個数や味蕾がある場所が様々であるということです。生物は、生き残るために、そして効率よく生活するために進化してきたということについてはよく理解していたことでしたが、その中で特に、“味を感じる仕組み”に目を向けたことはありませんでしたし、味を感じる味蕾が舌以外にあることなんて考えもしませんでした。特に、ナマズの味蕾は体の表面にあり、遠くから寄ってくる敵やえさの味を体を伝って感じていると知り、驚きながらも理由には納得しました。動物に対する私の漠然としたイメージとして、ウサギや牛など、繊細そうな動物ほど味蕾の個数が多く、ライオンなど大雑把そうな動物ほど少なかったです。動物の味覚についてなんの知識もない状態での性格イメージと、実際の味覚の細かさが対応しているのは面白いと感じました。人が動物について性格のイメージを持つとき、知識がないのに「この動物は味わってなさそうだ」という感覚を持って判断している可能性があるといえるでしょう。また、高校時代に理科の教員から「チョコレートがおいしく感じるのは、カロリーが高いからだ」と教わったことがあり、その時も初めての知識に驚きましたが、今回の授業を通して、体や脳を動かすのに必要な糖分が含まれているからという詳しい理由を知り、腑に落ちました。
これらの学びから、「では人間に近い味覚の動物はいるのだろうか」と疑問に思い、調べてみました。人間の成人の味蕾は約6000個であるのに対し、例えば犬の味蕾は約2000個です。味覚の敏感さに差はあるものの、人間と同じく糖を甘く感じるということがわかりました。犬はもともと雑食でしたが、人間の家畜として飼われてきた歴史から、人間の食生活に影響され、雑食になり、人間と同じく糖の甘みを感じます。反対に、猫は肉食動物であるため糖の甘みを感じません
( Joseph Brand 2005 )。このような知見からは、味覚が実際に進化してきていることを感じることができました。
ミラクルフルーツやギムネマなどの味覚修飾植物は、糖尿病患者の治療の手助けとして活用されていることを学びました。特に、体質でなく糖の取りすぎで糖尿病になった患者にとっては、糖の摂取を禁止されてすぐに行動するのは難しいだろうということは容易に想像がついたため、そのような患者にはとくに有効であると感じました。日常において、糖分をカットした食品は多く目にしますが、「そのような食品はおいしくない」という意見があるのも事実です。そのような流れの中で、“そもそもの味覚を変える”という発想は、患者本人にとっても、その周りでサポートする者にとってもストレスが大きく減るのではないかと思い、素晴らしいものであると感動しました。さらに、抑制する、またはされるストレスから解放されることは健康に良いと考えられるため、良いサイクルを生み出すことにつなげていけると考えます。私は、『甘いものが好きな患者にとって急に糖の摂取を禁止するのは難しい』という点について、身に覚えがあります。それは、ダイエット中の経験です。ダイエット中は、スイーツだけに限らず、無意識に糖分の多い食べ物を欲してしまいます。この経験から、糖尿病の患者だけでなく、肥満体系の患者の治療にも役立つと考えました。もちろん適度な利用が必須でありますが、正しく使えば、そのような患者にも適用できる可能性を強く感じました。
そこで、過度な乱用を防ぎ、本当に必要な人に必要な量だけ届くようにするには、味覚修飾植物への知識を持った専門家の存在がもっと必要になり、またその専門家と医療との連携も大切になってくると考えます。また、患者がその治療を踏み出す際に感じる抵抗感を減らすためには、味覚修飾植物の情報がもっと一般的になることが必要になると思いました。実際に、今回の授業の始めに、ミラクルフルーツや、ギムネマという言葉を聞いたことがある生徒は非常に少数派でした。味覚修飾植物を、今回の授業のように楽しく体験することで、安全性や効果を身をもって知ることができ、今ある味覚の機能の大切さやありがたさにくづくことができたり、実際に治療に役立てようとしたときに抵抗感を減らせたりというような、多くのメリットがあると思いました。いち味覚変化体験者として、味覚修飾植物が一般的に、さらに医療の分野で活躍する日が待ち遠しいです。
参考文献
Li X, Li W, Wang H, Cao J, Maehashi K, Huang L, Pseudogenization of a
Sweet-Receptor Gene Accounts for Cat’s Indifference toward Sugar. (2005).
David Biello, Strange but Ture: Cats Cannot Taste Sweets. (2007). Khamsi,
Cats lack a sweet tooth. (2005).
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Eさん
味覚についての重要性は今回の実験で身にしみてわかりました。たかだか甘味が分からなくなるだけでしたが、砂糖、チョコレートを少し食べただけで味覚の重要性が分かっただけでなく食生活を見直そうと思いました。どうしても現代日本人の例にもれずファストフードや加工食品などのジャンクフードが大好きで、日本食のような少し味の薄い食べ物に関しては敬遠している食生活を送っていました。頭の中では五感の一つである味覚が異常をきたすことについて大きな影響が自分に起こることはわかっていたつもりでしたが、今回の講義でそれを体感して大きな危機感を持つとともに食生活の見直しをしようと一発で思い立たしてくれました。やはり話を聞いたり忠告されたりするよりも実際に体感することで危機感が一層沸き立たせてくれますし、この体験は日本人の若者全員が行うべきだと思いました。講義の中でもおっしゃっていましたが日本人のジャンクフードへのあこがれと日本食への軽視はひどく、今せき止めないと味覚障害の人口増加とともに文化としても日本食がどんどんと失われてしまうのではないかと思います。ぜひ味覚修飾植物を使って日本人の味覚と日本食という日本の大きな文化を守ってほしいと思いました。
私は高校で生物を選択しており、詳しく勉強していたので今回の講義の内容について最初にレジェメを見た時にある程度は知っている内容だなと感じました。味覚を感じる仕組み、味覚の感度、なぜ違いがあるのかの理由、裏面は初見の内容でしたがこれでどんな講義を行うのだろうと思っていました。しかし、ふたを開けてみるとレジェメの内容をただなぞるのではなく本当に重要で知識的な内容はレジェメに書いてあり、その他の様々な関連情報をお話しされていてとても楽しく、(つまらない重要で科学的な内容はすでに書いてあり、少ないメモで、話に集中できたという意味で)楽に講義を聴くことができました。要所で日常生活で体験したであろう例を出すことで想像や理解がしやすく、講義に飽きることがなくずっとワクワクした状態で聞くことができました。
そんな講義のなかで興味深いと思った部分は味蕾のある場所についてです。どうしても味蕾といえば舌にあるという印象が強く、上あごやのどにもあるとは思いませんでした。また、舌以外の味蕾の重要性についても例を出して教えてくださったので実感をもって感じることができました。特に入れ歯についてのお話は興味深かったです。実際に祖母が入れ歯を付けており、母親が昔に比べて味付けが濃くなったと話しているのを聞いていました。その時は老化による神経の劣化や味蕾自体の劣化によるものかと思っていましたが、もっと物理的なものだと知って驚きました。
前述したジャンクフードへの意識でも同じでしたが、今回の講義で自分の健康に対する意識を大きく変えさせてくれました。ぜひ自分のように健康についての意識を変える人を一人でも多く増えさせてください。今回はありがとうございました。
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Fさん
講義を受講した感想、味覚修飾植物の今後の展開や味覚について知ることの重要性などについて以下に述べることとする。
まず、講義を受講した感想 (感じたこと、分かったこと、興味を持ったこと) を述べる。私は今回の講義を受講するまで、人間にとっての味覚やおいしさについて考えたことがなく、味覚に対する興味もあまりなかった。しかし今回、実験を通して味覚について学んで、人間と動物の味覚は異なり、生き物によって味蕾の数や役割も異なることや、私たちは普段当たり前のように味を感じているが、味を感じることができることは当たり前ではなく、有難いことであることなど、様々なことを知ることができ、人間の5感のうちの1つである味覚のみに関してこれほど多くのことが明らかになっていることに驚いた。同時に、味覚は私たちが毎日使用し、生きていく上で欠かせない感覚であるけれども、私たちが味を感じるセンサーである味蕾での味の判別方法が鍵と鍵穴の関係であること、人間にとっての味覚は経験と学習であること、味覚障害という病気があることなど、味覚について知らない人々も多いと思う為、味覚に関する知識が世の中にもっと広まれば、味覚という感覚の大切さに気付き、食に対する意識が高まる人も増えるのではないかと感じた。私は、今回の講義の中でも特に、ギムネマとミラクルフルーツの実験が印象に残った。今回の講義を受講するまでギムネマとミラクルフルーツの存在を知らなかったが、ギムネマは甘さを感じなくさせる植物、ミラクルフルーツは酸っぱいものを甘くさせる植物であることを実験を通して実感し、衝撃を受けたからである。糖尿病患者は糖分を取ることができない為、ミラクルフルーツを食べることで糖分を取らずに甘い思いをしてもらうと知り、ミラクルフルーツは医療現場における活用が期待される有用な植物であると感じた。今後、ミラクルフルーツが世界により普及すれば、生活習慣の改善の1つとして、医療現場のみではなく、一般家庭においても当たり前に使用される時が来るのではないかと感じた。
また近年、若者の間で味を感じることができない「味覚障害」という病気が存在し、これは、加工食品やファストフードに頼り過ぎた生活による亜鉛不足が原因であると知り、個人一人一人が自分の食生活に気を付け、栄養バランスを意識した食事を取ることが必要であると感じた。しかし、特に近年は加工食品やファストフードが発展し、より美味しさが増しており、加工食品を食べる機会が増えていると感じる。さらに、ストレスが多い現代社会において、ジャンクフードを食べることでストレス発散をしている人もいると感じている。このような社会的背景も含め、味覚障害という病気が増えているのではないかと考えた為、味覚障害の予防には、個人一人一人が食事に気を付けることはもちろんだが、加工食品の発展やストレス社会などの加工食品に手を出してしまう社会的背景にも目を向けるべきであると感じた。
次に、味覚修飾植物の今後の展開や味覚について知ることの重要性について述べる。私は、味覚修飾植物は今後、以下のような展開をしていくと考える。
第一に、今回の講義でギムネマを食べて甘みのない世界を体験したように、味覚修飾植物を利用して味覚障害を疑似体験することで、食に対する意識を変容させることができると考える。実際、味覚教育の効果を検証することを目的として、ギムネマとミラクルフルーツを使用した疑似体験を含む味覚教育の受講者にアンケート調査を実施し、味覚教育介入前と味覚教育介入後の対象者の「食」に対する意識の変化を調べた研究では、味覚教育が「食」に対する興味を高め、喫食時における意識が「満腹感」、「見た目」、「価格」から「栄養バランス」、「健康」、
「喫食時の雰囲気」 へ意識の変化が見られることなどが示された。これらの結果から、味覚教育が食への意識を深め、美味しく食生活を送る為にはバランスよく栄養を摂取して健全な身体を作る必要があるという意識付けをすることができたと考えられている。つまり、味覚教育が食生活の改善に繋がる有効な手段であることが示されたのである
(島村, 2012)。
第二に、今回の講義でも学んだが、味覚修飾植物を糖尿病患者などの糖の制限が必要な方に対して利用することで生活習慣の改善の手助けをすることができると考える。島村(都甲・内田監修)
(2007) によると、実際、糖尿病をはじめとする生活習慣病患者などに、生活習慣の改善の手助けとしてミラクルフルーツなどを利用する方法があるという。糖尿病患者にミラクルフルーツを使用したところ、酸っぱい食材で甘いものを食べたという満足感を得ることができた為、糖分の摂取量が減少し、その結果、数ヶ月でヘモグロビンA1cが正常値に戻ったというデータも取得されている。ミラクルフルーツの利用方法を工夫することで低カロリーの酸味食材を効率よく摂取することが可能になると考えられている。その為、私は、病気と上手く付き合っていく為の1つの方法として味覚修飾植物が活用できるのではないかと考える。
第三に、島村(都甲・内田監修) (2007) によると、ミラクルフルーツは地域おこしの食材としても利用できるという。日本におけるミラクルフルーツの栽培には、18℃以上の気温と多湿の環境を年間を通じて維持する必要があり、冬場の温度管理に費用がかかることから、温泉地などの地熱が余っている場所や、廃油をボイラー燃料とするような燃料費にコストをかけない場所では、地域おこしの食材としての栽培が可能である。
以上のように、味覚について知ることは、食に対する意識を深め、食生活の改善に繋げることや、糖の制限が必要な患者への支援方法の1つとして味覚修飾植物が存在することを知り、活用していく上で重要であると考える。今後、味覚修飾植物は、家庭や教育現場、医療現場、福祉現場など、様々な場において活用され、人々の生活の質向上に役立てられるのではないかと考える。
参考文献
<参考文献>島村 光治 (2012). 2010年度の講演の紹介と小学生への味覚教育アンケート結果――味覚修飾植物を用いた味覚教育―― 日本福祉大学健康科学論文集,
15, 17-25.
島村 光治(都甲 潔・内田 享弘監修)(2007). 食品・医薬品の味覚修飾技術 シーエムシー出版
島村のコメント
小職の執筆論文や書籍を2冊読んでいただき嬉しく思います。講義内容とリンクしているところも気づいていただきありがとうございました。
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Gさん
本講義を受講するまで、講義でピックアップされたミラクルフルーツとギムネマや、その他の味覚修飾植物について存在を知らなかった。そもそも味蕾が生きるのに何の役に立つのかについて考えたことがなかったので、ほかの動物にも存在することに驚いた。普段はおいしいか、そうでないかしか意識していないが、五感のうちに「味わう」ことが含まれるのは、見る聞くなどと同じように、味蕾は私たち動物がいち早く危険なものに気づき、生存するためのセンサーなのだと気づかされた。また、味蕾が舌以外にも存在することも初めて知り、自分の身体のことであるのに理解していないことが多いと感じたし、胃液の酸っぱさなどをのどに感じるのはのどにも味蕾があるからだと知り、納得がいった。
ミラクルフルーツが、糖尿病患者の治療の一助として試験を実施しているとのことだが、味覚修飾植物によって、あるいは人工的に一部の味を感じさせる味蕾の受容体をふさぐ、または別の味を感じさせるものと結合することによって他の受容体に感知される物質によって、例えば子供が嫌がる苦い薬の苦みを感じさせなくすることができる飴のようなものが実現出来るのであれば面白いと考えた。講義に関連して、人にとっての味覚の、おいしさを感じさせることに対する視覚の影響の大きさについて興味を持った。私は、かき氷のシロップやゼリーは色で味が変わるという話を聞いたことがある。例えば菊池(2021)では、ゼリーの色と甘みの強さの評価の関連を調べており、ここでは明確な関連は認められていないが、赤色のゼリーはイチゴやリンゴを連想させ、甘味強度が増強した可能性について述べられている。また色調の僅かな違いによって味覚が影響を受ける可能性が示唆されていることも述べられている。
味覚についての知識を身につけることで、味覚修飾植物が本来の味を感じさせなくしたように、自分たちが騙されていることに気づき、その仕組みを解き明かすことに繋がる。その仕組みを利用することで、講義で紹介されたように医療の助けになる可能性がある。医療以外の生活部門にも広まれば、おいしさをより安全に、健康的に表現できるようになる可能性が考えられる。また、味覚修飾植物によって味を変えられてしまったように、私たちが持っている味覚が絶対的に揺るがないものではないと知ることは、個人が感じる味だけですべてを判断することは危険であり、様々な情報や知識を組み合わせて食べ物について考え直す必要があるようにも感じた。
【参考文献】
菊地 亨 (2021). ゼリーの甘味評価に対する色の影響 武蔵丘短期大学紀要, 28, 9-13.
島村光治のホームページ https://www.taste-m.com/miracle.htm (閲覧:2023年6月3日)
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Hさん
今回の講義を受けたことで、今までご飯やお菓子を食べて味を感じていた場所が舌や上顎、喉にある味蕾によって判別されていたことが分かった。過去に、親から味覚地図の話をされたことがあり、その当時は「そうなんだ」と情報を鵜呑みにしてしまい、信じていたが、今回の講義でその内容が間違いであるということを知り、専門家の話を聞くことの大切さ・情報源をきちんと確認することの重要性、疑いの目を持つことを忘れないようにしたいと改めて思った。
味の対比作用で取り上げられた、饅頭やスイカなどに塩を入れることや、振りかけることで甘みを引き出しているという例は様々なところで使われている方法だと思うので、これからお菓子などを食べた際に包装容器の裏に書かれている成分表示を見ていきたいと感じた。
動物にとっての味覚という話では、ライオンが獲物を追いかける光景はテレビで見ることはあったが、食べる順番という観点では今まで気にしたことがなかったため、植物を消化する小腸などの内臓系から順に最後はお肉 (筋肉) で終えるという、まるで人間のように食事を取っていることに非常に驚いた。
小さい子がゲームソフトなどを飲み込まないために、苦み成分を塗っているという事を今回の講義で初めて知り、味覚という面から誤飲を防ぐという考えは素晴らしいなと感じた。
好き嫌いのメカニズムで子供期の味覚形成が重要という点では、親や周囲の人から受動的に与えられた食事を取る時期の関わり方は重要視しなければいけないなと感じた。
味覚修飾植物を用いることによって、様々な病気で苦しんでいる人の救いの一つになるため、今後幅広く展開されることは非常に有益なことであると思う。また、味覚についての知識があることによって、自分自身が味わっている時に味をどのように知覚しているのかについて改めて知ることができ、食事を取ることの楽しさを考えるきっかけになると同時に、味覚障害を持つ人の辛さについても考えることができるだろう。そのような点から、味覚について知ることは非常に重要である。
今回の講義で、デモンストレーションとしてミラクルフルーツのタブレットやギムネマを食べて、酸っぱい食材が甘く感じる、甘かった食品が甘く感じなくなるという体験したことで、周りの人にも同様な体験をしてみてほしいと強く感じた。講義を通じてでなければ、このような興味深い体験はできなかっただろうと思うので非常に良い機会であった。また、私は熱い食べ物や飲み物で舌を火傷することが多いので、これからはあまり舌に負担をかけないようにしたいと感じた。
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Tさん
今回の講義で感じたこと、わかったことは、味を感じる仕組みです。私は、味をどうやって感じているのかを考えずに食べ物を食べていました。ですが、今回の講義を聞いて、口の中には味蕾というものがあり、その味蕾が味を感知していることが分かりました。また、食べ物の成分は鍵で、味蕾は鍵穴であると聞いて分かりやすい例えだなと思いました。例えば、ピーマンの成分には苦い成分が入っていて、苦い鍵穴である味蕾に当てはまることで脳に伝えられ私たちは味を認知していることが分かり、人間や動物の口の中は本当にすごいなと思いました。味蕾があるから私たちは甘いや苦いなどの味を判別できるので、これからの人生で味蕾を大切にしていくべくだと思いました。そのためには毎日歯磨きや定期的な歯医者に行くべきなのかなと思いました。
私は料理人などの舌を使う職業の人ははじめから舌が普通の人より発達しているからなれる職業だと思いました。しかし今回の講義で、一番味蕾が多いのは赤ちゃんで、料理人は特訓して、舌の処理能力を鍛えた人がなっていると分かり、料理人の人は才能ではなく努力して料理人になっているんだと分かり、アルバイトの店長や飲食店でキッチンをやっている人たちのことを尊敬するなと思いました。また、草食動物は毒物を察知するためや自分が生き延びるために口の中が発達し味蕾がとても多いですが、ヘビやニワトリは食べ物や獲物を丸飲みするため、味わって獲物や食べ物を食べていないため味蕾が少ないと、動物によって味蕾の数が違うことも分かり自分の知識がひとつ増えてよかったなと思いました。肉食動物は草食動物の筋肉や生肉が好きだと思っていましたが、肉食動物はフルコースのように食べる順番が決まっており、草食動物が食べた植物のエッセンスがたくさん入っている小腸から食べ、筋肉はおまけと聞いてビックリしました。前から肉食動物はどうやって野菜や植物などの栄養を取っているのかなと思っていたのでここで解決できてよかったです。
私は自分が苦手な食べ物は舌がその味を受け付けていないから食べれないと思っていました。なので、苦手な食べ物は克服できないものだと思っていました。しかし、嫌いな食べ物は自分の意識次第で克服できることを知り、社会人になる前までには自分の嫌いな食べ物を1つでも減らしたいなと思いました。また、今回の実験で使ったミラクルフルーツを使って苦手克服するのもありだなと思いました。私はあまりレモンの酸っぱさは好きではありませんでしたが、ミラクルフルーツを下にこすりつけて食べたら、少しすっぱかったですが全然食べれて、最初の方は甘く感じるぐらい美味しいと感じました。そのため、自分の嫌いなトマトで同じ実験をしてみたいなと思いました。もしレモンの時と一緒の結果であれば、トマトが美味しいと感じることができ、苦手克服ができるのではないかなと思いました。
今回講義をしていただきありがとうございました。自分の知らなかったことがたくさん知れたので有意義な時間でした。この知識を色々な人に教えてあげたいなと思いました。
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Jさん
当たり前の感覚として捉えていた味覚は複雑な様相をしているのだということを知ることが出来た。私はこの講義を受けるまでずっと味覚の知覚は味覚地図に基づいて知覚されるのだと考えていた。例えば、小さいころに苦手なものを食べなくてはならないとき、知覚地図を思い出してなるべく甘味の感じる部分で食べようとしていた。しかし、効果は全く芳しくなかった。やはり食べられなかった、効かないなと考えていたが、本講義を受講し味覚地図が否定されていて、本当は味蕾によって知覚されるのだと知り、衝撃を受けるとともにあの時の現象はこのためであったのかと納得した。
今まで単語としてしか知らなかった「味蕾」というものに対する理解が深まった。本講義で驚きであった事柄の一つがこの「味蕾」に関する内容であった。興味深いなと感じたのは味蕾が舌上にあるだけではなく他の箇所にも存在するということである。これには興味深いと感じるとともに、衝撃的であった。講義内でも触れられていたが、胃液が戻ってきたときに舌まで戻ってきていなくても胃液の酸味 (といっていいでしょうか) を感じた経験からも納得した。その他にも味蕾の数がその生物を取り巻く環境、何を主食にするか、生存競争などの影響によって変化しているということ、ヒトにおいても乳児の方が多いということも興味深い内容であった。年を取るにつれ味覚が変わるからと小さいころに何回か親に言われたことを思い出し、そのメカニズムはここにあったのかと、味覚という感覚の理解が進んだ。
もう一つ驚きであったのは好き嫌いのメカニズムである。第一印象と経験による好き嫌いは納得できるものであったが、雰囲気によっても好き嫌いが発生することには驚いた。私の周囲には野菜嫌いの友人がとても多い。これはかなりバイアスのかかった考えになるかもしれないが、野菜嫌いの友人たちはかなりの割合で家庭内において家族間の仲がそこまでよくない、あるいは何らかの問題があるなどしてよい雰囲気とはいえない環境あるいはその反対に過度に箱入りになっているといった場合に多いように感じたことからもしかしたらそういったことが関係したのだろうかと考えた。
本講義で味覚について学び、味覚研究の可能性についても感じた。特に講義内で触れられていた糖尿病患者に対するミラクルフルーツやギムネマなどの味覚修飾物質の試験はいずれ大きな成果を成し遂げるのではないかと実際に実験を通して体感したことで感じた。現代の若い世代は韓国アイドルなどの流行からなのか、ダイエットに励む人が多く、中には食事は最低限で足りない栄養分はサプリメントで摂取する人も少なからずいるようである。もちろん責め立てることは誰にもできないのではあるが、本講義を受講し、味覚の面白さを一端でも触れることが出来た私からすれば、それはとてももったいないことのように感じてしまう。当たり前に存在するために考えることはあまりないが、味覚という面白い感覚を持つ我々であるからこそ、過度な偏食をするのではなく、食事というものを通して、その面白さをより体感するべきではないかとそんなことを考えた。
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Kさん
私は本実験で味覚の重要性と教科書に載っている常識に疑問を持つことの必要性を感じました。味覚を司る味蕾は口腔内のいたるところにあり、歯を一つ失うだけで、また味蕾を一つ失うだけで味覚に変化をもたらす。そのため、口腔ケアを定期的に行い、虫歯や歯の欠損がないキレイな状態を維持する必要があると考えます。さらに、味覚地図などの掲載内容が変化したように、教科書やWebサイトに載っているものを鵜呑みにするのではなく、今ある情報に少しばかりの疑問を持って情報を精査する必要があると感じました。
ナマズは目が発達していない代わりに味蕾を多く持っているとのことですが、視覚や聴覚に障がいを持つ人が一芸に秀でていることと関係していると考えます。また、甘みが増すミラクルフルーツ、味覚を失うギムネマのように味覚に影響を与える味覚修飾植物は、現在公表されているもののほかにも沢山あると思います。それらの植物を調査することは、人間の味覚を変化させる効果があることから、好き嫌いを変化させること、味覚を含む人の感覚を誘導することが可能となることなどの点において今後の発展に必要であると感じました。
島村先生の講演は例や豆知識が多く非常にわかりやすかったです。「すべての人にとって美味しいもの不味いものはない」、「味を感じることは有り難いこと」という発言を契機に、深く考えることのなかった食べ物や味覚とその変化について知り、考える良い機会となりました。個人的には味覚異常が起こらないように亜鉛の摂取量を調整し、歯を大切にしたいと思います。また、私の友人にも味覚や味蕾について詳しく知ってほしいと感じたため、不躾ですが、私の出身地である大阪での講演がもっと増加しましたら、個人的には大変うれしく思います。
<参考文献・ウェブサイト>
・https://www.taste-m.com/
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Lさん
今回の講義ではメインの味覚修飾物質の他にも、味蕾・味覚の概要、主観的なおいしさの分析、ヒトと動物の味覚の違いなどがとり上げられており、一回の授業でも包括的な学習ができたかと思う。しかし、それらを差し置いて大きな印象を受けたのは味覚修飾の実践だった。私は味覚修飾のような実感が一番の理解につながるような物事が好きなため、実践ができたことに今回の授業の価値を大きく感じ、受けられてよかったと思った。そんな味覚修飾の実践で興味深かったのは、ミラクルフルーツによってレモンの酸っぱさを感じなくなってもレモン特有の味は感じたことだ。酸味が甘味になったうえでレモンの味を感じたということは、レモンの味はそれ一様のものではなく、酸味成分とレモン特有の味成分に分解できることを示していると思われる。このような発見をしたり発想をできたりするのも実践あってのことだと思う。
味覚修飾植物の応用例を見て、発見を次に活かそうとする姿勢に感心した。味覚修飾植物の作用は自然由来のものでは希少ではあるが、直接人の役に立つわけではない。例えば、酸味を甘味に変えられるとしても、甘味が欲しいならそもそも甘いものを食べれば済む話だからだ。しかし、この作用を見逃せない人々、つまり甘味が欲しくても通常の方法では解決できない人々がいることに目をつけ、味覚の福祉への応用に乗り出したのは、益の有無が分からないものを有益なものに変えたプロセスだと思う。このように、世に無二のものをその独自の使い方で社会に役立てるという、新しい概念の創出をしていることに感心した。
上記の通り、味覚修飾植物はその作用で味覚についての問題を解決でき、自然由来なのもあり、立ち位置は唯一無二のものである。そしてそういった味覚の研究が社会に貢献できる場面があるという事例は、味覚研究が無視できない利益を生む可能性があることを示しているだろう。味覚修飾植物のような特異な例でなくとも、味覚は人間の生活に根ざしており、その研究に社会への波及効果があるということは想像に難くない。味覚の研究は社会における一つのピースであることは間違いなく、その一方で福祉という形で味覚についての問題も解決しようとしている。このような点から、味覚修飾植物の今後の展開や、味覚について知ることの重要性を感じた。
とはいえ、味覚について知ることには目的がなくてもよいと思う。味覚は誰もが持っていて、嫌でも馴染みがあるものになる。だからその教育には人生の充実度を上げられる効果があると思い、ある意味自己目的化できると思ったからだ。これは私自身もそう思えた。なので、そのような教育の機会を与えてくれた今回の講義に感謝したいと思う。
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Mさん
まず講義を聞いて学んだこととして、人間は環境や状況によって「おいしさ」が変わることを知りました。例で挙げられていたように、たしかに急に甘いものが食べたくなったり、スポーツをした後にスポーツ飲料が飲みたくなったりした経験が何度もありますが、あれはただの気分だったり喉が渇いただけだと思っていました。しかし実際は、体内で欠乏している栄養素を感じるようにできていると知って、おいしく感じる機能は人間を栄養素で健康にさせるための大切なアラームのようなものなのだなとわかりました。しかし、なにか特定のものを食べたくなるということは、なにかの栄養素が足りていない、すなわち栄養素バランスの良い食事ができていないという裏付けでもあると思うので、もしなにか特定のものが食べたいと感じたら、食事内容を見直す必要があるのかなと思いました。
また、文化によって「おいしさ」が変わるというのは納得できるところはありますが、実際のところ、おいしい国民食ランキングといったように、審査員の好みで順位が変わってしまうのではないかと疑問に思うところもあります。また、小さいころから慣れ親しんだ味は美味しいというのも納得できますが、大人になって味覚が変わったりするのはどのような原理なのかなと不思議に思いました。
次に味覚修飾植物の応用法についてですが、説明にもある通り、低カロリーなのに甘みを感じることができるのは、糖尿病や肥満で悩んでいる人の治療法にうってつけだと思うし、標準型の体型の人でも、それらの防止になると考えます。また、これらの植物を大量生産しようとする動きがあり、成功することができれば、より健康な人が増加するのではないかと考えられます。しかし、この食文化が広まったときに、単にこの物質が良いものであるという情報だけが出回り、とりあえずこれを食べとけばいいだろうと思うような人が増えてしまう可能性があるのではないかと考えます。たしかに糖尿病や肥満の人には、糖質を抑えるという点においていいと思いますが、たとえば子どもだったり体力を使う仕事をしている人がこの物質ばかり摂取するとなると、栄養不足に陥ってしまいます。そのため、今後味覚修飾植物を広めていくにあたって、必ずメリットと同時に正しい知識を伝える必要があると考えます。
これまでジャンクフードやお菓子を美味しく感じ、青汁といったようなものを美味しくないと感じたように、「おいしさ」=健康に良くないものというイメージが少しありました。しかし、おいしさは不足している栄養素を教えてくれるものだったり、あくまで文化的なものだったりと「おいしさ」のイメージを変えるような知識を得ることができました。だからといってなんでもかんでもおいしいものだけを食べればよいというわけではありませんが、もう少し自分の味覚を信じて、楽しい食生活ができればいいなと感じました。
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Nさん
今回の講義を受けて、味の認知の過程に脳が大きくかかわっていることを知り、驚いた。私たち人間は、おいしいものは反射的・直感的においしいと判断するため、そこまで脳とのかかわりはないのではないかと考えていたからである。加えて、味の識別だけでなく、価値判断なども行われていることも知ることができ、味の認知過程における脳の役割を理解することができたと思う。
今回の講義ではギムネマやミラクルフルーツをいただいて実食してみたが、こういった味覚修飾植物はどれも熱帯植物であることを学び、日本でこれらが普及するのは時間がかかりそうだと思った。実際に私も、今回の講義の講義を受けるまでこれらの名前すら聞いたことがなかった。これらの名前がもっと広まることで研究を始める人が増え、肥満の問題や薬などへの応用へつながるのではないかと思う。さらに、現在流行している新型コロナウイルス感染症の影響で味覚障害を起こす人や、その後遺症を患いウイルスが完治しても苦しんでいる人は大勢いる。味覚修飾植物の名前や情報をより多くの人が知り、研究の数を増やしたり研究を進めたりすることで、彼らの力にもなれる可能性があると考える。
ちなみにこのレポートを書いている現在の私は、先日新型コロナウイルス感染症に感染してしまったため味覚障害を起こしており、どんな食べものや飲みものも不味く感じてしまい、何も口にできず苦しんでいる。講義を受けた段階では、「問題になるほど肥満でもないし、私と同じような人々にとってはそこまで興味がわかないかもしれない」と少し感じたが、新型コロナウイルス感染症になってみて「ギムネマやミラクルフルーツがあれば今まずいと感じているものもおいしいと感じるのかな」と思ったし、こういった場面で応用できるようになれば革命的だと思い、多くの可能性を秘めている味覚修飾植物についての理解をもっと深めたいと思うようになった。
また、新型コロナウイルス感染症の流行で名前が広まった味覚障害について、日本人があまり亜鉛を取らなくなったために発生しやすくなっているとのことだったが、亜鉛を多く含む海藻や貝類、魚は最近の若者が嫌う傾向があるような気がする。こういった好き嫌いにも味覚修飾植物は良い影響を与えられる可能性があると考えており、これから良い方向に研究が進み、日本でも広まれば将来的に平均寿命の延伸につながるのではないかと考えた。
参考文献
驚きの味覚体験〜ミラクルフルーツとギムネマ〜(授業資料)
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