私が今回の講義で興味深いと思ったのは、甘味を消してしまう「ギムネマ」という葉だ。今まで私は、味覚は舌全体で感じるものだと思っていた。それだけに、「甘味だけを消す」という効果にとても惹かれた。講義を受けて舌には、甘味なら甘味、酸味なら酸味、それ専用の味蕾があることが分かったが、それをまだ知らなかった私にとって、ギムネマは未知の体験であった。今まで味覚に異常が出たことがないだけに、「味が消えて食感のみが残る」というのは想像もつかないものであったのだ。実際、ギムネマを試した後に食べた砂糖は今までに食べたものの中で群を抜いておいしくないと感じた。砂糖特有の、舌に残る強い甘味がすべて消え、ジャリジャリとした砂のような食感だけが残るというのは耐え難いものであった。どれだけ「味」というものが大切なものなのか、食事するうえで私たちを助けてくれていたのかが身をもって分かった。
私は、漫画などで「ショックやストレスで味を感じなくなってしまう」というシチュエーションを見たことがある。漫画の描写では、食べ物を口に含んだ瞬間にむせてしまったり、嘔吐してしまったり、かなり酷い状態が描かれていた。私はそのような漫画を見たとき「味が消えただけならば、我慢すれば普通に食事が摂れるだろう。むせたり、嘔吐したりするのは過剰反応ではないか」と思っていた。しかし、今回の味覚体験を通して、いかに私が浅はかな考えを持っていたかを思い知った。甘くておいしいはずの砂糖やチョコレートが、味もなくただ砂や粘土を食べているように感じてしまい、とても困惑した。チョコレートに関しては少し苦いと感じただけで食べきることはできたが、砂糖は少しなめただけでも嫌悪感で、吐いてしまいそうになったほどだ。しかし、今回私たちが体験したギムネマは「甘味を感じさせなくなる」葉である。つまり、ギムネマの葉を試したとき私たちが失っていたのは「甘味」だけなのだ。もしこれがすべての味覚であったら、いったいどうなってしまうのだろうか。そう考えたらとても恐ろしくなった。甘味だけならば、ほかの味覚で補えばよいが全てを感じなくなってしまったら、きっと私なら食事を摂るのが嫌になってしまう。だから、私は味を感じることができてよかった、などと言っている場合ではないのだ。亜鉛不足で味覚障害になり得るのならば、誰だってその可能性は持っている。そしてすでに味覚障害の人もいる。今回の体験を通して、私は味覚障害の人たちの気持ちを理解しなければいけないと感じた。今回のことがなければ、きっと一生わからない問題だったかもしれない。
味覚を変えるといっても、悪い方向ばかりでもない。酸味を甘味に変える「ミラクルフルーツ」のタブレットの試食をしてとても驚いた。あんなに酸っぱかったヨーグルトが甘すぎるぐらいに味が変わってしまったのだ。これは甘いものを食べることができない人たちにとっては革命ではないだろうか。実際は甘いものを食べているわけではないのに、甘いものを食べたと感じられるのだ。講義でも説明されていたが糖尿病患者にとっては効果てき面である。即効性ではないが、これにより少しでも甘いものを食べることを抑えられるのならばこれほど良いことはないように思う。ミラクルフルーツを食べるだけなら、痛いことも苦しいこともない。辛いことをせず、満足感を得ることができる。夢のような話だが、それが実現できるのだから、味覚修飾植物をもっと世に広めていくべきだと思った。
今回の体験では身になることばかりで、自分でも知識が深まったと思う。今回学んだことを忘れてしまわないようにこれからも学習に努めていきたいと思う。
■参考文献:講義内容の概略(プリント)