今回の講義で分かったことは、味を感じる仕組みには味蕾が大きく関わっていることです。味は水に溶けない限り変わりません。そこで、口に入ってきた食べ物は、唾液とまじることにより水溶液になります。その水溶液が乳頭(葉状乳頭、茸状乳頭、有郭乳頭、糸状乳頭)に取り込まれ、味蕾で判別されます。味と味蕾の関係は鍵と鍵穴のような関係であり、そこで甘味、苦味、塩味、酸味、うま味が判断されます。
味蕾は、人によって、もしくは年齢によって数が違います。赤ちゃんには約12000個ありますが、成人するころには約6000~9000個に減っています。これは赤ちゃんの免疫力が成人に比べて低いため、万が一毒のあるものを口に入れてしまった時に、たくさんの味蕾のおかげでそれを判別し、すぐに吐き出すことができるからです。ここで興味深いこととして、ソムリエやシェフといった味を追求するような職業の人でも、味蕾が多いわけではないということです。それらの職業の人達は、脳での処理能力を極めることによって味を追求しているのです。
動物によっても味蕾の数や場所が違います。食べ物を丸のみする蛇は2〜3個しかありません。ナマズは濁った水の中でも敵や獲物を判断することができるように、皮膚に味蕾があり、数も200,000個と多いです。虫にも味蕾はあり、ハエは手に味蕾があり、毛穴から液体が出るため、手で食べられる物か、毒があり食べられない物かを判断できます。
味蕾とは味覚に大きく関わるわけですが、人間以外の動物にとっての味覚は、生きていく上で役に立つものがおいしいということであり、栄養があるかないかも本能的に分かってしまうため、必要がなければ食べないということです。必ずしも必要があるとはいえない物を食べ、美味しさや、美味しさ以外の新しい発見を得られるのは、動物の中でも人間だけです。美味しいものを美味しい、不味いものを不味いと共感できるのも人間の特徴です。そういった意味では人間は恵まれた生き物だといえるかもしれないと思いました。
人間にとってのおいしさの中でも不思議と思えたのが、情報が味覚の処理に影響を及ぼすということです。例えば、ラーメンを食べることになったとき、そのラーメンが評判のいい店で作られたと聞いたら美味しく感じるでしょう。逆に、掃除がされておらず汚い調理場で作られたと聞いたら、美味しくない、もしくは食べたくないと感じてしまうでしょう。また、食べ物の色で、イクラがもし青に着色されていたら食欲が失せてしまうでしょう。このように人間は、情報により味覚が変化したりすることがあります。これは、人間の脳の中の偏桃体が影響しているからです。偏桃体の働きを利用することにより、何か食品をより美味しくさせたり、美味しそうに見せたりなどができるため、マーケティングに利用することも可能だと思いました。
味覚を変えるのに情報を添えることも有効ですが、味覚修飾物質を活用する方法もあることがわかりました。味覚修飾物質の代表的なものとして、ギムネマとミラクルフルーツが挙げられます。ギムネマは、ギムネマ酸の働きにより糖分の吸収を妨げ、甘味を感じなくさせます。ミラクルフルーツはミラクリンの働きにより、酸っぱい物を甘く感じさせます。これらを活用すれば、糖尿病の改善やダイエットに活用できると思いました。
味覚の研究が進めば、将来的に食べ物の好き嫌いをなくし、栄養のある食事をとり、健康面を支えることにつながると思います。医療目的ももちろんですが、他にも料理の質の向上、生物学への味覚からのアプローチなど、多岐にわたる選択肢が生まれると思います。
また、味覚の研究は心理学にも通じるものがあると思います。お店の店内の配色を赤色中心にすると、食欲増進につながるのは何故か?など、味覚からの派生で心理学への疑問につながることもあると思います。ギムネマとミラクルフルーツの実験を実際に行うことで、味覚修飾植物の働きや、すごさといったものを肌で実感することができました。私はその経験を友達や家族に紹介しようと考えました。紹介するためには説明できるようにならなければならないため、より味覚への理解を深めることができると思います。こうして少しずつでも味覚修飾植物が世間に知られるようになれば、いずれは研究がさらに進み、新たな発見があるかもしれません。