今回の『驚きの味覚体験』の講義では、ミラクルフルーツやギムネマなどの味覚修飾植物を使った体験ができただけでなく、人間やその他の動物の味覚について、学ぶことができた。味覚や味蕾については他の講義でも習っていたが、この講義を聞くまで知らなかったことが多かった。特に、味蕾での味の識別方法を鍵と鍵穴の関係に例えていたのはとてもわかりやすく、よく理解できた。
講義の中で『好き嫌いのメカニズム』についてもお話頂き、「第一印象」、「雰囲気」、「経験」が大事なのだと分かった。このことについて文献で調べたところ、商品の売出しにこの「経験」を利用し、子供の記憶に商品を刷り込むことができると書かれていた。講義でも子供の味覚について話があったが、人は赤ちゃんの頃に一番味蕾が多く、大人につれて減っていく。それは「食べていいものかどうか」を舌で判断する必要がなくなるからであるが、子供ではまだ知識や情報に乏しく、酸味、苦味は受け入れられない。辛味は味蕾を刺激して感じるものではないが、同様に子供には受け入れられない。そのため、子供向けのカレーは甘口になっている。香辛料がシンプルで、あまり辛くなく、甘味が強調されている。子供は甘味が好きであるが、それはエネルギー源となる糖質を摂取しようとする本能であると考えられている。そのため、甘味がないと子供は興味を示しにくい。また、過度な辛味は危険な情報となって子供には受け入れられない。異様な風味のスパイスは、食経験の少ない子供にとっては異物でしかない。結局子供に受け入れられるカレーは、シンプルで辛味が少なく、甘味が多いものになる。有名な、「リンゴとハチミツとろり溶けてるーー」というのは成人にはそんなにピンとこないが、子供にとっては重要な味付けであると考えられる。子供の頃に脳内で栄養素の情報と結びつき、おいしいと受け入れられた記憶は、生涯、好ましいものとして残る。これは、成人してさらに強い情報、すなわちより幅広い香辛料、強い辛味にむかう。この時点で、栄養素の手がかりであった香辛料は、そのものを楽しむものに独り立ちする。香辛料の効いた高級カレーは大人のためにある。このように、子供のころの「経験」をもとに大人の「好き嫌い」が形成されるというのはとても興味深い話だと思った。
ミラクルフルーツやギムネマの体験では、味の変化に驚くとともに、味覚とは不思議なものだと感じた。また、ミラクルフルーツの効果は絶大で、確かに糖尿病患者に使ってもらうなど、いろいろなことに活用することができたらいいと思った。
今回の講義では大変興味深い話が多く、私自身ももっと味覚についてよく調べてみたいと思うきっかけになった。またこういった講義があれば是非参加してみたいと思う。
■参考文献
・伏木亨『グルメの話 おいしさの科学』p98,99 恒星出版株式会社 2005