私は小学生の頃、今では間違いとされる舌の味覚地図をテレビで見たことがある。もちろんそんな時期から味覚について熱心に興味を持っていたわけではないが、記憶にあるということは多くの人がその間違った情報に触れ、情報を得ていたのだろう。
そもそも味というのは昔の部位によって認識できる味が異なるのではなく、口内の乳頭にある味を感じるセンサー、味蕾に食べ物が水溶液として取り込まれることで認識できるのだという。味蕾は舌に7割、上あごやのどに3割あるというがここで私の中で矛盾していたものがひとつ解消された。間違いとされる舌の味覚地図だげが味を感じる原因だと思っていたが、そうなると味を感じるための物質が必ず舌の上を通らないといけないことになる。しかしどうだろう、例えば嘔吐物は舌の上を通る前からのどの奥の方ですっぱいものを感じたりする。口内で出血したときは食べたことすらないが、自然に「鉄の味」という言葉が連想される。これも食道にある味蕾が舌を通る前に嘔吐物の味を認識したり、普段においとして上あごの味蕾で感じていた鉄を、今度は口内の味蕾で「鉄の味」として認識していたのではないかと考えた。
もっとも味蕾が多い人は赤ちゃんで約12,000個ある。これは、なんでもロに入れてしまう赤ちゃんにとって食べて良いものか悪いものかを判断する為に必要だからだ。そのため苦味成分をおもちゃに施し、赤ちゃんが口に入れても吐き出してくれるように工夫しているところもあるという。このように、生きていくうえで味蕾が必要不可欠となる生物は健にもいる。ナマズなどの滞った水中で生きる生物は視力が弱い。食べ物を探すには味蕾でにおいを認識して捕食しなければならない。また、チョウは卵を葉に産みつける為、手に味蕾がありその葉が毒を持っていないか手の毛穴から水分を出して味蕾に取り込み確認する。どんなに小さくて細かな構造の味蕾でも、多く持つのにはちゃんとした理由があるのだと思った。
口の中をけがしたりしたときでも感じることだが、やはり美味しいものを美味しく食べたいという思いは誰にでもある。それは病気を持った人でも、高齢の方でも同じだ。今回ミラクルフルーツのタブレットを実際に体験してみて、同じ食べ物でも全く味が違ったことにとにかく驚いた。食制限で糖分を多くとることができない父にもヨーグルトとポッカレモンを出して同じ体験をしてもらったが、なかなか感じることができない甘みに笑顔をこぼしていた。この方法がもっと実用化されることで、食べたくても食べられない、美味しいものが食べたい、と悩んでいるさまざまな人たちを精神的な面から救ってあげることが出来るのではないかと考える。
将来、医療関係の仕事に就きたいと考えている自分にとって今回の請義はとても興味深い内容だった。病気そのものの治療だけでなく、苦しんでいる人の気持ちをどう救うか、ということにも目を向け考えていきたいと思う。
お忙しい中、とても貴重なお話をしていただきありがあとうございました。