大人になると苦みを感じにくくなり、子どもの時苦手だった食べ物でもおいしく食べられる人が多くなるのはなぜかと思ったことがある。その時は、成長していくうちに味覚が変わり苦い物が美味しいと感じるようになるからだと思っていた。しかし、今回の講義を受け、味蕾の数が関係していると言うことが分かった。赤ちゃんの頃は12,000個くらいある味蕾は、成人になると6000〜9000個になる。それは、歳を重ねるにつれ、食べて良い物か悪い物かを口の中に入れて確認する必要がなくなり、毒ではないことが経験と学習により知るからだと分かった。大人になると多くの味を感じられるようになると思っていたのでとても驚き、人間にとっての味覚とは「経験と学習」であるという言葉がとても印象に残った。また、ひとつの味蕾ですべての味を感じるわけではないことや、味蕾は舌全体に7割、残りの3割は上あご(軟口蓋)、のど(喉頭蓋)にあるということも初めて知り、人間の体には味を感じる仕掛けが沢山あるのだと感じた。好き嫌いのメカニズムもすごく興味深く感じた。講義を受けるまでは、単純に美味しくないと感じた食べ物を嫌いになると思っていたが、初めて食べたときの第一印象、食事をしている時の雰囲気、食中毒にかかったなどの経験が関係していることを知り、周りの人の食べ方や、食べ物に関する経験などが好き嫌いに関係しているなんて考えたこともなかったので驚いた。今後、自分が親になった時や、食事をするのが嫌になってしまった患者さまと関わる中で味やイメージはもちろん、雰囲気や経験も大切だということを頭に入れながら、なるべく好き嫌いが少なくなるよう、また食事をする楽しさをもう一度思い出していただく工夫が出来ると思った。
味覚修飾物質、味覚修飾植物は初体験だった。「ギムネマ」も「ミラクルフルーツ」も初めて名前を聞く植物だった。ギムネマはただの葉だと思ったが、ギムネマの葉を噛んでから砂糖やミルクチョコレートを食べると私の好きな甘くて美味しいというイメージからかけ離れ、砂糖はザラザラした砂のようなものになり、ミルクチョコレートは脂っぽい塊になった。それとは対称にミラクルフルーツは、酸っぱい物を甘く感じさせると聞いて魔法のような植物だと思った。残念ながら私ははっきり甘くなったことを感じることが出来なかったが、それでもレモン汁入りのヨーグルトが食べやすくなったのは実感することが出来た。この体験でギムネマは食事制限のある方々の役に立つのではないかと思う反面、食べ物に対するイメージが悪くなることが課題だと考える。ミラクルフルーツは、糖尿病など事情があり甘いものが食べられない方々の味方になると思い、より多くの人の手元に早く届いてほしいと強く願う。
味覚障害について、私は味の濃い物ばかり食べている人がなると思っていた。しかし、味覚障害には亜鉛が深く関係していたのだ。加工食品やファストフードなどに頼りすぎると亜鉛が含まれていないだけでなく、味細胞の再生時に必要な亜鉛を体内から追い出してしまい、体内の亜鉛量が不足し新しい味蕾が作れなくなってしまう。それに対し、日本食でよく用いられる海草、そば、日本茶などの食品には多くの亜鉛が含まれている。この話を聞いて味覚障害の方が増えている今、確かに日本食ではなく、パスタやハンバーグなどの洋食の方が多く食べられ、また好きな人が多いかもしれなと感じた。しかし、味を感じられなくなるのは楽しみがひとつ減ることになるのではないかと思う。せっかく日本食には亜鉛を多く含む食品が沢山使われているのだから、見直し、味覚障害になる人が1人でも少なくなるとよいと感じた。
今回の講義を受け、味蕾は人間を含め動物にとってとても大切だと感じた。味覚をだまし困っている人の役に立つギムネマやミラクルフルーツを私のように聞いたことがない人はまだ沢山いると思う。「驚きの味覚体験〜ミラクルフルーツとギムネマ〜」の講義を受ける機会に巡り合えたことに感謝しながら、今後多くの人が味覚について正しい知識・関心を持つこと、ギムネマやミラクルフルーツが広がり多くの人の役に立つことに期待したいと思う。