私にとって今回の講義は、沢山の新しい発見や驚きの連続であった。そこで印象に残ったことをいくつかあげてみる。
まず、味を感じる仕組みについて味覚というのは、見た目が蕾のような形をしている味蕾というものが舌に沢山ある事で、味として認識されるシステムであると知れた事である。今までは、舌が味を感じる過程が謎に包まれ、味覚地図のような構造だと思い込んでいたが、すべて味蕾によって伝えられる事を知り、興味がわいた。また、味の判別方法として味と味蕾は鍵と鍵穴の関係にありその鍵穴が埋まる事で脳に電気信号が送られ味覚として認識できているのだとイメージしやすい説明で納得する事ができた。味蕾のある場所は舌に7割、残りの3割は上顎と喉に存在すると聞き、味覚というのは必ずしも舌だけではないという事を学んだ。また、味蕾の数は成人およそ6000個〜9000個よりも赤ちゃんの方が12000個と倍近く多い事に衝撃を受けたが、赤ちゃんの特性を理解すれば見えてくるものがある。赤ちゃんは手にとるすべてのものを口の中に入れるが、疑わしいものは吐き出すという自然と体に害のあるものとないものを区別する作業を味蕾が助けているのだと知り、リカちゃん人形に苦味を塗って吐き出せるようにする事で誤嚥などの危険性から守れるなどの案は、良い事だと思った。そして、もし人の成長する過程と共に味蕾の数が減っていくのであれば、高齢者では味覚を感じにくくなるという事なのかなとふと浮かんだ。人間とは反対にナマズが200,000個という数には驚いたが、体内に存在する味蕾で敵と餌を判断する為に存在するのだと知る事ができ、逆に蛇は2、3個と少ないが、味蕾が増えるという事は頭が大きく、歯も多くないと負担がかかってしまうなど、それぞれの生物に合う数が備えられていることに感動した。また自分自身、ハエが手をこすり合わせる姿に拝んでいるような不思議な感覚を抱いていたので、腕に味蕾が存在し、触れる事で毒があるかないかを確認し食べられるかの判断をしている事を知った時は、これからハエを観察する事も面白いかもと思えた。
次に人間にとっての味覚とは経験と学習である事から、好き嫌いのメカニズムを学んだ。私の嫌いな物はほとんど幼い頃に得た味覚である為、治すにはとても勇気がいる。このことから、子供の頃からしっかりバランスの取れた食事をし、味覚の形成が重要になるのは当然の事だと分かる。よく、親の食は子に影響するというが、この言葉は本当だと再確認した。また日々の食生活について見直そうと思うきっかけにもなった事に感謝する。
最後になってしまったが、初めの味覚修飾植物のギムネマやミラクルフルーツの実験を振り返ってみる。まず、ギムネマを舌に擦り付け、チョコレートを食べると苦く感じ、シュガーは砂を食べているような感覚になり、味覚障害を持つ人と同じ感覚を体験した。次に、ミラクルフルーツのタブレットを舌に擦り付け、グレープフルーツジュースとプレーンヨーグルトにレモンを入れたものを食べると苦味や酸味が甘く変化した。この実験から、我慢する事なく満足感をえる為にも味覚から「食」を考える事の大切さを考える事ができた。植物の力で味覚までもコントロールできる素晴らしさを知れて良かったと思う。