私はこれまで、間違った味覚地図を信じ込んでいた。そのため、味覚は舌全体で感じていることや、上あごやのどにも味蕾が存在していることを知り、とても驚いた。以前から祖父母の「若いころに比べて味を感じにくくなった」「濃い味付けを好むようになった」という話を聞いており、疑問に思っていた。それまでは老化とともに感覚機能が鈍くなってきたからではないか、昔は現在と比べて塩味の濃い料理が多かったからその名残なのではないか、と考えていた。しかし、今回の講義で入れ歯が上あごの味蕾を塞いでしまっているため、以前と比べて味を感じにくくなっているということがわかり、疑問が解決された。同時に、歳をとってからも食事や味を楽しむために自分の歯を大切にし、極力入れ歯に頼らないようにしようと改めて思った。
また、ギムネマやミラクルフルーツの実験を通して鍵と鍵穴の関係性を体感したことは、とても貴重な体験であった。これまで味を感じるということは当たり前であり、おいしさを味わうことに対するありがたみを考えたことなどなかった。しかし、今回の実験で甘さの感じないチョコレートや、砂糖がこれほどまでにまずいものだと分かり、正常に甘味を感じることができるということがいかに素晴らしいかを実感できた。おそらく今後の人生においてそのようなことを考える機会はあまりないと思われるので、とても良い機会を与えていただいたなと思う。この感覚を忘れないようにしたい。
同じく味覚に関しては、うま味を発見したのは日本人だということ,最初の段階では海外であまり理解されなかったことに驚いた。水の違いによって、私たちの感じているようなうま味を感じられないのはもったいないことであり、他の国にもそれぞれ良さがあるけれど、素材の味を楽しむことのできる日本人に生まれて良かったと感じた。そして、折角5つの味を十分に感じることのできる素晴らしい舌を持っているのだから,今後の生活においても素材の味を生かした料理を作り,様々なもののおいしさを感じていきたいと思う。
味覚修飾植物に関しては今回初めて存在を知った。正直なところ最初に説明を聞いた時にはミラクルフルーツの効果はあまり信じていなかった。しかし、実際に効果を体感した今は、医療分野だけでなく広く世間に浸透し、様々なものに活用されてほしいと思う。現代の日本人にとって糖尿病は他人事に出来ない問題である。糖尿病にならないように気を付けることが大切であるが、もし糖尿病になってしまった場合でも、この味覚修飾植物が活用されることによって、今ほどの我慢をすることなく甘味を感じられるということはとても素晴らしいことだと思う。また、味覚修飾物質であり苦みを抑える効果のある“ベネコートBMI−40”がとても興味深かった。お年寄りを中心に利用されているということだったが、それだけではなく病気に苦しむ人にとって救世主のような存在だと感じた。人が楽しむという点だけでなく、つらい思いを減らすという点でも,味覚修飾植物や物質は重要な役割を担うと思うので、今後さらに周知され発展していってほしいと思う。
今回の講義ではこれまでに当たり前だと思い、素通りをしてきてしまった重要なことに気づかせていただいたと思う。人間は扁桃体で行われている安全や健康など様々な情報による判断に味覚が大きく影響を受けているという話から、あいまいな情報や操作された情報に惑わされないように、先入観を持たず本当に自分の信じるものを口にしようという気持ちが思い起こされた。子供のころの味覚の形成が非常に重要であるという話からは、好き嫌いがないような味覚に育ててくれた両親への感謝の気持ちが起こされ、将来自分の子供にも良い味覚経験をさせ好き嫌いない子に育てたい、きちんとした味覚に育てなければならないという気持ちが起こされた。これらは非常に大切だが、今までの私にはなかった考え方なので、非常に良い機会を与えていただいたと思っている。この自らの経験を踏まえて、今後の食生活をきちんと見直していきたいと思う。
貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。