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■ 参加者の御感想


参加者の御感想

2014/05/02に実施した中京大学 心理学部1年の皆さんのレポートです。

講演風景1 講演風景2



Aさん 

 私はこれまで、間違った味覚地図を信じ込んでいた。そのため、味覚は舌全体で感じていることや、上あごやのどにも味蕾が存在していることを知り、とても驚いた。以前から祖父母の「若いころに比べて味を感じにくくなった」「濃い味付けを好むようになった」という話を聞いており、疑問に思っていた。それまでは老化とともに感覚機能が鈍くなってきたからではないか、昔は現在と比べて塩味の濃い料理が多かったからその名残なのではないか、と考えていた。しかし、今回の講義で入れ歯が上あごの味蕾を塞いでしまっているため、以前と比べて味を感じにくくなっているということがわかり、疑問が解決された。同時に、歳をとってからも食事や味を楽しむために自分の歯を大切にし、極力入れ歯に頼らないようにしようと改めて思った。
 また、ギムネマやミラクルフルーツの実験を通して鍵と鍵穴の関係性を体感したことは、とても貴重な体験であった。これまで味を感じるということは当たり前であり、おいしさを味わうことに対するありがたみを考えたことなどなかった。しかし、今回の実験で甘さの感じないチョコレートや、砂糖がこれほどまでにまずいものだと分かり、正常に甘味を感じることができるということがいかに素晴らしいかを実感できた。おそらく今後の人生においてそのようなことを考える機会はあまりないと思われるので、とても良い機会を与えていただいたなと思う。この感覚を忘れないようにしたい。
 同じく味覚に関しては、うま味を発見したのは日本人だということ,最初の段階では海外であまり理解されなかったことに驚いた。水の違いによって、私たちの感じているようなうま味を感じられないのはもったいないことであり、他の国にもそれぞれ良さがあるけれど、素材の味を楽しむことのできる日本人に生まれて良かったと感じた。そして、折角5つの味を十分に感じることのできる素晴らしい舌を持っているのだから,今後の生活においても素材の味を生かした料理を作り,様々なもののおいしさを感じていきたいと思う。
 味覚修飾植物に関しては今回初めて存在を知った。正直なところ最初に説明を聞いた時にはミラクルフルーツの効果はあまり信じていなかった。しかし、実際に効果を体感した今は、医療分野だけでなく広く世間に浸透し、様々なものに活用されてほしいと思う。現代の日本人にとって糖尿病は他人事に出来ない問題である。糖尿病にならないように気を付けることが大切であるが、もし糖尿病になってしまった場合でも、この味覚修飾植物が活用されることによって、今ほどの我慢をすることなく甘味を感じられるということはとても素晴らしいことだと思う。また、味覚修飾物質であり苦みを抑える効果のある“ベネコートBMI−40”がとても興味深かった。お年寄りを中心に利用されているということだったが、それだけではなく病気に苦しむ人にとって救世主のような存在だと感じた。人が楽しむという点だけでなく、つらい思いを減らすという点でも,味覚修飾植物や物質は重要な役割を担うと思うので、今後さらに周知され発展していってほしいと思う。
 今回の講義ではこれまでに当たり前だと思い、素通りをしてきてしまった重要なことに気づかせていただいたと思う。人間は扁桃体で行われている安全や健康など様々な情報による判断に味覚が大きく影響を受けているという話から、あいまいな情報や操作された情報に惑わされないように、先入観を持たず本当に自分の信じるものを口にしようという気持ちが思い起こされた。子供のころの味覚の形成が非常に重要であるという話からは、好き嫌いがないような味覚に育ててくれた両親への感謝の気持ちが起こされ、将来自分の子供にも良い味覚経験をさせ好き嫌いない子に育てたい、きちんとした味覚に育てなければならないという気持ちが起こされた。これらは非常に大切だが、今までの私にはなかった考え方なので、非常に良い機会を与えていただいたと思っている。この自らの経験を踏まえて、今後の食生活をきちんと見直していきたいと思う。
 貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。



Bさん 

 今回受講した島村先生の授業は,正直春学期にこれまで受けた授業の中で最も興味深いものだった。私は,現在心理の研究分野の中で特に,認知行動の分野に心酔しており,大学院進学を目指している。その中で今回,味覚の認知システムについて初めてお話を伺うことができたのは自身の視野を広げる素晴らしいきっかけになったと思う。
 味蕾における味の判別方法を鍵と鍵穴で例えられていたのは非常にわかりやすく,自宅で家族に先日の講議を説明した際にもより理解してくれたようなきがした。また,すべての動物は口内で味を感じていると思っていたので,ハエや蝶は手など,生物によって味蕾の場所が違うと聞いて衝撃をうけた。また,年齢の上昇に伴って味蕾が減少するという現象にも驚いたが,大人になるにつれてビールや珈琲を好んで飲みだすことを思うと納得がいった。
 人間の味覚は学習と経験による情報から扁桃体で価値判断をしているということだったが,そのことにも日常生活を思い出すと得心がいった。どんなにおいしいと賞される料理も,実家の母の手料理にはかなわない。料理の専門家が判断すれば栄養価・視覚・味ともに料亭の方が優れているとしても,母の懐かしさという付加価値はそれらを大きく上回るだろう。しかしその付加価値は数値化することもできなければ他人が判断する事も難しい。
 上記のように美味しさには個人差が生じるものの,甘味や苦みなどの味覚にはそれほど大きな個人差は生じない。甘いものは程度のさこそあれ甘いし,苦いものは苦いと判断する。今回,講議と受けてギムネマやミラクルフルーツの驚きの効果と知り,さまざまな分野への応用が期待されると感じた。講議でも話題に上っていた,糖尿病患者に役立つかもしれないという話も素晴らしかった。これから患者が食べる幸せを感じながら治療に励めるというのは,多くの患者にとって幸福なことであろう。しかし,私は,先生のこの研究はさらに多くの人を救える可能性があると感じている。私は,短期間であるが常夏の島フィリピンに滞在したことがある。そこには,陽気で温かい人々が多く住んでいたが,平均寿命はかなり低い。理由として,一日の食事量及びその内容があげられる。彼らの食事はほとんどが日本人からは甘すぎるほど甘かったり,塩辛いものが多かった。そのため,現地の若い人々はおなかをすかしているのに下腹が出ていたりなど完全な肥満体系であった。また,一日に5回もそのような体に良くない食事をとっているのである。現地の友人になぜかと問うと,2月でも30度近くある気温のもとではそのような食事をとらないと夏バテになってしまうからということであった。もしこのミラクルフルーツのような植物の栽培を現地でも行えたら,彼らの平均寿命引き上げに少しでも貢献しないだろうかと考えた。フィリピンに限らず赤道に近い南国の国々では,同じような問題を抱えていると思う。幸いミラクルフルーツは暖かい地方でよく育つということだったので,現地栽培も比較的容易なのではないかと考えた。
 また,今回ギムネマを食べて初めて味のない世界というものを体験した。甘味という味覚情報を抜き取るだけでここまで,感じ方に影響するのかと驚いた。と,同時に味覚障害の人の感覚を一瞬だけでも疑似体験して,ここまでつらいものなのかとこころが傷んだ。なんとか味覚の感覚システムを再生する,あるいは脳の神経システムを利用して味を感じることができるようになる方法をみつけられたら良いのにと感じた。
 また,日本新薬のホームページをみて,今まではたいして関心を持たなかった植物に少し興味がわいた。世界でまだ見つけられていない,または現地の人しか知らない新たな植物の中にギムネマやミラクルフルーツのような人の認知システムを変えてしまう面白い植物があるのなら,もっと深くこの分野について知りたいし研究してみたいと思った。

参考資料
http://www.nippon-shinyaku.co.jp/herb/herb_top.html
日本新薬ホームページ



Cさん 

 神経科学の授業の課外授業として島村光治先生をお招きして行われた今回の味覚体験の講義は、私にとって味覚について知る貴重な体験となった。体験学習であったためインパクトが強く、忘れられない経験になった。
 今回の講義で一番印象に残っていることは、味覚地図は実は間違いであるということである。人間の舌には味蕾というものがたくさん存在していて、舌全体で味を感じているため、味覚地図は間違いであるということが分かったときは衝撃が強かった。ギムネマの試食したときでも、舌の奥の方でチョコレートを舐めてみたら甘みを少し感じたのも、それがあたっているからであると感じた。また、味蕾の種類はそれぞれの味の種類とともに分かれていて、味と味蕾は鍵と鍵穴のような関係であるということを知った。人間の味蕾は約6000〜9000個あり、上あごやのどにも存在している。草食動物は毒の草を探知しないとならないため、肉食動物よりも味蕾が多いのが特徴だ。また人間の赤ちゃんは味というものを知らないため、約1万2千個もの味蕾があるという。ハエやチョウチョには卵を産み時にその葉に毒があるか調べるため手に味蕾があるという話を聞いたときは、動物の身体はそれぞれがうまく生きていくことが出来るように上手に作られているのだと思い、深く感心した。また好き嫌いのメカニズムについて学んだ際、食事をしているときの雰囲気が大切だということはとても納得した。私が将来家庭をもった時も、家族そろってわいわい食べることを大切にしたいと思う。また、私たちはさまざまな情報に左右されて生活しているということを実感させられた。人間は脳にある扁桃体で味を判断しているが、全てが正しい情報であるとは限らない。偽装表示や賞味期限など今さまざまな問題が発生しているが、私たちは正しい情報を選択し生活していかなければならないと深く感じた。
 ギムネマを噛んで甘味のない世界を体験したことは、一種の味覚障害の疑似体験であったことを最後に知った。自分自身でそのことを体験してみて、味を感じることができないことはとても恐ろしいものだということを身に染みて感じた。味覚修飾植物は糖尿病や肥満などの問題に対して対処することが出来る。例えば糖分を感じさせるミラクルフルーツを用いて、甘味のないデザートを食べ満足感を得ることが可能だ。また食生活を改善にもつながり、近年問題になっている生活習慣病の予防になる。またこれらの植物を用いた授業を行うことで、食や化学に興味をもつ人や子供たちが増えるだろう。これらの教育分野を推し進めて、生活習慣病や味覚障害に対するアプローチをしていくことが重要であることを今回の講義から学んだ。私も今回の講義を通じて味覚について興味を持つことが出来た。自分の将来に生かすことが出来ることは忘れないようにしたい。また味覚障害についてまた詳しく調べてみたいと思う。



Dさん 

1.はじめに
 私たちが普段「おいしい」と感じるのはなぜだろうか。人にとってのおいしさは4つの種類に分類できる。本稿では、このおいしさの仕組みをファストフードに応用し、なぜファストフードが美味しいと感じるのかを考察する。さらに、近年若者の間で顕著になっている「味覚障害」との関連性を示し、若者が味覚について知ることの重要性や味覚修飾植物の今後の展開についても示唆する。

2.人にとってのおいしさと味覚障害の関係性
 本講義では、人にとってのおいしさは4つの種類に分類できる。4つの種類とは、生理的欲求に基づくおいしさ、文化に合致したおいしさ、情報に基づくおいしさ、薬理学的なおいしさのことである。これらの中でも、文化に合致したおいしさと薬理学的なおいしさの説明が印象に残った。なぜなら、これらは近年若者に増加している味覚障害に大きく影響していると感じたからである。
 文化に合致したおいしさは、小さい頃から慣れ親しんだ味のことである。具体的にはおふくろの味や食文化の違いが挙げられる。このおいしさを感じる仕組みは、ファストフード業界で有名な某企業も利用している。子ども達が少ないお小遣いでも買えるように価格を低くし、味に慣れ親しんでもらおうという戦略である。この戦略は商売の上では非常に有効であるが、近年若者の間で増加している「味覚障害」に加担している可能性があると感じた。この病気は加工食品やファストフードに頼り過ぎた食生活の結果、亜鉛が不足して発症する。一方、ファストフード店は慣れ親しんだ味で若者の心を鷲掴みにし、長く食べ続けることができる価格を提示する。これは、一人暮らしをする大学生や独身の社会人にとっては好都合な条件であり、両者の利害が一致している。事実、自炊をするよりも24時間営業しているファストフード店で食事をした方が楽である。しかも、自分で料理をするよりもおいしい。それならば、誰もがファストフード店を選ぶだろう。
 薬理学的なおいしさも、ファストフードのおいしさの理由の一つである。脂、香辛料、だしが代表例であり、これらは人間の脳に直接働きかける。これらが多く使用されている具体的な食品としては、ファストフードやポテトチップスなどが挙げられる。前述の通り、これらの食品は味覚障害の原因となりうる。事実、某ファストフード店のハンバーガーには全体の約29%の脂が含まれていることが講義で紹介された。すなわち、私たちがファストフードをおいしいと感じるしくみには脳も関係しているということだ。私は、若者の味覚障害は生活に対しての「甘え」が反映された結果だと感じていた。しかしこの講義を受けて、ファストフードには小さい頃から文化に合致させようとする企業の戦略が潜んでおり、人間の脳に働きかける薬理学的なおいしさをもつことがわかった。そして何より、これらの戦略が若者の味覚障害に加担しているという事実に憤りを感じた。私たち学生は、味覚のしくみについて非常に未知である。私自身、この講義を受けるまでは味蕾という言葉も知らなかった。しかし、今回の講義を受けたことでおいしさを感じる仕組みがわかった。この知識を得なければ、ファストフードのおいしさの秘密に気付かず、味覚障害との関連性を考えることもなかっただろう。私は本講義を通じて、味覚について「知る」ことが若者の味覚障害を防ぐ第一歩になるのではないかと感じた。

3.若者の味覚障害防止のための味覚体験学習
 味覚修飾植物の紹介として、本講義ではギムネマとミラクルフルーツを使用した。しかし、あくまでも味覚実験という目的であった。私は、ここに「若者の味覚障害防止」という意図が加えられないかと考えた。
 例えば、ギムネマを食べた後にチョコレートを食べると甘さを感じない。普段おいしく感じるチョコレートが、脂臭くしょっぱい粘土のようだ。この体験はなかなか衝撃的だ。大人でも驚くのだから、子どもはもっと驚くだろう。この時に、子どもたちに「味覚障害になるとチョコレートが美味しく食べられない」ということを教える。すなわち、ギムネマを噛んで甘味のない世界を実際に体験することで、味覚障害を疑似体験するということだ。味覚障害のつらさを若者に伝える教材としても、味覚修飾植物は役に立つと私は考える。特に、一人暮らしの大学生や社会人にこの疑似体験は必要だと感じる。家族と一緒に暮らしている子どもは親によって食事をある程度コントロールされている。そのため、本人が嫌でも野菜を食べたり、お菓子の量を制限されたりするだろう。しかし、一人暮らしの大人はそうはいかない。学校や仕事に疲れ、そこから料理を作る気など起きない。独身の男性は特にファストフードに頼りがちだ。24時間営業のファストフード店に深夜、男性の姿が多く見られるのもこの理由が関係しているのではないか。今後、味覚修飾植物が若者の食生活を見直し、味覚障害を防止するひとつのきっかけになることを強く望む。

<参考文献>
島村光治のホームページ http://www.taste-m.com/how_to_write_report.htm
(2014年5月4日アクセス)



Eさん 

 大学に入学して履修した科目の中で、今回のように実験的で受け身だけの内容ではない講義は初めてだった。私は今回この講義を受けるまで味覚に関してはほぼ無知の状態で、味覚に全く興味はなかった。しかし島村先生の講義で私の知らない味覚の世界があり、夢中に実験にのめりこんだ。
 私はまず、食べただけで特定の味覚を抑えたり違う味覚に変化させたりするという無知な私にとっては魔法のような実験に驚いた。しかしそれだけではなく、先生はこの仕組みを治療用に使っていた。酸味を甘味に変化させる貴重なミラクルフルーツをタブレットにすることで手軽に酸味の強い食べ物も甘い食べ物として摂取できるというものだ。私はこの味覚の分野はとても医療に相性が良いと感じた。普通人間の感覚を麻痺させようものなら鎮痛剤のように神経に直接働きかけなければならない、これはもちろん副作用を伴うものもあるので何度も使うと体に負担がかかる。しかしそれに比べ島村先生の開発したミラクルフルーツのタブレットは小学生にも説明がつくような簡単に理解できる仕組みで味覚を変化させる。人間の感覚を変化させることは鎮痛剤と変わりない、しかし後者のタブレットの方を摂取してみたが薬と言われるとかなり違和感がある。感覚を変化させるというのに、それくらい手軽に摂取できるというのは私の中で前代未聞であった。
 このような味覚を変化させるタブレットなどの発明により今後、味覚の分野はさらに重要な分野になると思った。この分野は持ち込める食糧が制限される中で栄養を十分に摂取しなければならない場面、具体例をあげると宇宙での宇宙食などがある。栄養を豊富に含むこと、宇宙に持ち込むこと、味が整えられていること、この三つの中でどれか二つは実現できても三つとも全て満たすことは難しいだろう、しかしこのようなときミラクルフルーツのタブレットのように味覚を変化させる手軽な物があればその課題を克服することができる。また海外で遭難したときなどのサバイバルにも活きるかもしれない、遭難したとき、たとえ食べられそうなものを見つけても、いざ食べてみると物凄くまずく、食べられないかもしれない。そんなときに味覚を変化させる何かがあればそのような状況も乗り切れるのではないかと思った。
 私達が普段身近に感じている味覚だが、今回のように味覚について少しだけ深く知ることができる機会ができたことで私の味覚に対する関心や興味は皆無だった状態から一気に私の中で興味のある分野に変わった。普段当たり前のように感じている味覚一つ一つに異なった意味のシグナルがあることを知り、本来味覚とは私たちが生き抜くために備わった重要な器官だと分かった。しかし本来生き抜くためにある味覚が今では娯楽の対象のような扱いになり、より美味しさ感じるための存在のように見受けられるようになった。まさに今は人間が支配する時代だと、そのようなことも感じたりした。



Fさん 

 驚き、舌を疑い、苦笑した。ミラクルフルーツのタブレットを舌全体に塗りこんだ後、顔をしかめるほど酸味のあったはずのグレープフルーツジュースを飲んだ私の感想である。ミラクルフルーツの説明を聞いていた時も、実際は大したことはないと想像していた私にとって、ジュースの味の変化は想像を大きく上回り、只々笑うしかなったのである。しかし、私が今回の講義で驚いたことは、ミラクルフルーツの効果だけではない。むしろ、その直前の講義内容の方が、私を驚かせたのである。
 味覚に関する授業と聞き、最初に私が頭に思い浮かべたのは、味覚地図である。高校一年生の家庭科の授業で、初めて、舌にはそれぞれ違う味を感じる場所がある、という事を習った時の衝撃は今でも覚えている。講義が始まってすぐ、私の最初の驚きは、味覚地図の否定であった。今まで信じていたものが、簡単に崩れたのである。大袈裟な言い方だけれど、私は、味覚地図を習った高校一年生の時から、大学一年生の5月2日の夕方まで、それを疑うことなく生きてきたのである。常識の破壊の瞬間であった。説明を聞いていくうちに、確かに、先ほどギムネマを舌に塗った後に食べたチョコレートは、嚥下する寸前、舌の奥でほのかに甘い味を感じたことを思い出し、簡単に情報を鵜呑みにしてしまう自分を恥じた。
 次に、動物によって、味覚が違うという話で私が知ったことは、味覚というのもちゃんと生きる上で必要な能力なのだ、という事である。私には、常々疑問に思っていたことがあった。それは、人間の五感である、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚のうち、なぜこの中に、味覚があるのだろうか、という事である。なにも味覚が要らないという事をいっているのではない。ほかの感覚に対して、味覚だけがどうにも浮いているように感じていた、という意味である。つまり、講義を聴くまでの私には、味覚の重要さが分からなかったという事である。毒を察知するのに味覚が必要だという事にも気づかなかったのである。
 人間にとっておいしいという事はどういうことなのか、という話では、特に、文化と情報の二つの要因とおいしさとの関係に興味を惹かれた。以前、テレビで昆虫や犬を食べている国があることを知った時、信じられないという感想を抱いたが、小さいころからそのような文化の中で育った場合、それらを当たり前のように食べても、何も不思議なことはないという話は興味深かった。もし、自分が小さいころから虫や犬を食べていたのなら、と考えてみると、言い表すことのできない不思議な気分になる。そして、情報とおいしさの関係では、人間が情報に左右される生き物であるという事は知っていたが、レモンの主成分に関する質問で、自分自身も情報に左右されているという事に気付いた。味覚地図のこともそうだが、これからは、少し周りを疑ってみることも大切なのだと思った。
 今まで、味覚を過小評価していた事に気付いた私が、真っ先に心配したのは、味覚の消失である。講義の前半に食べたギムネマにより、甘みを失ったチョコレートは、とても食べられるものではなかった。味覚の意味を認識することで、その重要性を理解することができた。味覚を失ってみて初めて、その大切さが理解できた。身の周りには、こんなにもおいしいものが溢れているのに、それを味わう事が出来ない状態がどれほどの苦痛か、講義を聴くまで私は、考えもしなかったのである。
 ミラクルフルーツ。この不思議な存在を私は今まで知らなかった。この魔法の植物が、もっとたくさんの人に広まることが出来たのならば、現代人に劇的な変化をもたらすことが出来るのではないだろうか。食べられないほど酸味の強く、栄養価が高い食物も、手軽に食べることが出来るようになる。ミラクルフルーツ以外にも、まだまだこの世界には、発見されていない味覚修飾植物が存在している。その中には、もしかしたら、苦みを消す植物のようなものも、あるのかもしれない。これらの植物に頼ることは、甘えなのかもしれないけれど、そうすることにより、現代人の生活習慣病をかなり減らすことが出来るようになるのではないだろうか。生きるための味覚を騙すことにより、生活を改善するというのも、何とも皮肉な話に聞こえてしまうのは、私だけだろうか。