島村先生の講義に参加し、初めて学んだ事はいくつもあった。
まず、味覚地図は間違いという事である。私は小学生の頃、学校の図書室にあった本から味覚地図を知った。その本には味覚地図が肯定的に書かれていて、幼い私は興味深く思い、自分で試してみた。砂糖を用意し、指で味覚地図に従って舌に乗せてみた。しかし、どの領域においても甘味が感じられ、自分がおかしいのかと疑問であった。知識が増えるにつれ、味覚地図は嘘ではないかと思っていたが、今回の事を聞きはっきりした。
次に人間の味覚の仕組みに関する話も興味深かった。味蕾という部分が水溶液となった食物の味を認識している事は初めて知った事実である。歯で噛み砕いたりすり潰したりし唾液と混ぜ合わせるとはいえ、視認できるほどに細かくなった固形物からそのまま味を認識していると私は思っていたからである。また、鍵穴の話は内分泌ホルモンと受容器の関係と似ていたので、そちらも理解しやすくなった。
味蕾の数は動物によって異なるが、口の中以外にあったり極端に少なかったりするものがいる事には驚いた。味蕾の数が多いのはナマズやチョウであり、少ないのはヘビや鳥類である。ナマズは泥水中という生活環に適応するために、チョウは幼虫の餌を区別するために、ヘビや鳥類は俊敏な動きを保持するために味蕾の数や箇所が変化していった。生物の適応能力が味覚の発達・衰退を調節している事に感心させられた。
最後にハンバーガーを「文化に合致した美味しさ」として、小さい頃から慣れさせるために安価で売っているという戦術に衝撃を受けた。私は幼い頃、健康志向の祖母のおかげでファーストフードを食べる機会がなかったので、ハンバーガーを食べる事は今でもあまりないが、よくハンバーガーを買いに列ができているのを目にする。世の中には人の味覚を利用した罠が多くあるのかもしれないと感じて少し嫌な気分になった。また、親や祖母の言う事を聞いた食生活を送っていてよかったとも思った。
実習
ギムネマの葉を噛んでチョコや砂糖を食べると、チョコや油成分を含んだ泥団子のように、砂糖は砂のような食感だけになった。チョコはカカオの割合の高い市販のチョコと食べた時と似た感じであった。(私が食べたものはカカオ97%)。チョコは多少の苦味を感じ、砂糖は何の味もなかった、ミラクルフルーツはレモン果汁と無糖ヨーグルトを混ぜたもの(以下ヨーグルト)とグレープフルーツジュースを使い、実験した。ミラクルフルーツを食べる前はヨーグルトは酸味が前面に出て、僅かな苦味(渋み)が感じられ、グレープフルーツジュースは果実そのものの味であった。食べたあとでは、ヨーグルトは酸味と甘味のバランスがちょうどよく、はちみつレモンのような味に変化し、グレープフルーツジュースは甘味と苦味が混ざった何とも言えない味に変化していた。私はヨーグルトの味の方が好みだった。マビンロウに関しては確かにほんのりと水が甘くなったように感じたが、その効果はそう長くは続かなかったように思う。約10分ほどで効果が薄まり、元の水に戻っていた。使い道としてはブラックコーヒーや紅茶を無糖のまま飲む時や健康的なダイエットに利用できるかと思う。しかし、舐めている時の味に好き嫌いがはっきりと表れそうなので改良が必要かもしれない。
この講義で一時的な味覚障害を体験したが、食べる事や味を正確に認識できる事のありがたさがよくわかった。ギムネマの場合はたった1つの味覚が抑えられるだけで甘味が感じられなくなり、食欲が減ったように感じた。ミラクルフルーツの場合は酸味を人間が栄養と認識する甘味として強く感じさせる事で食欲を増進させているように感じた。このように変化を感じられる事も私の味覚が正常だからという事実に、味覚障害にならないようきちんとした食生活をしていきたいと思った。