私たちが普段感じている食べ物の『おいしさ』は、味覚・嗅覚・触覚・視覚・聴覚という5つの感覚と外部環境、食環境、生体内部環境とが組み合さって、初めて感じることが出来るものだということを知った。
また、味を感じるには食べ物が唾液と混じり水溶液になることが必要だということを知って、私は唾液とは食べ物の消化のためだけに存在すると思っていたので、味を感じるためにも使われているということに驚いた。
私は今回の講義で「ヒトは見た目に弱く、青色の食べ物だと食欲がわかない」という話を聞き、食欲と色彩の関係についてもっと詳しく知りたいと思い、調べてみた。食品の中でも赤やオレンジ、黄色などの鮮やかな暖色は食欲を増進させる色で、ヒトはこのような色を見ると食欲を喚起される。これに対し、紫や黄緑色、青系統の寒色は食欲を減退させる。しかし、日本人にはあまり受け入れられない紫色や青色系統のカラフルな食べ物も、アメリカ人は好んで食べるという。これは、アメリカには青や紫を使ったデザートがあり、そのような色彩の食べ物をよく目にしているからである1)。つまり、食欲色は食文化の影響を後天的に強く受けるので、地域や世代によって大きく異なるというのだ。私は青色の食べ物は、単に見た目が気持ち悪いから好まれないのだろうなと思っていた。しかしそれは、私たち日本人が食事の中で青色の食べ物をあまり目にしないからだということを知り、たしかにダイエット番組などで目にする青いご飯などは、自然には存在しないし、見慣れていないから気持ち悪いと感じるのかと納得した。また、このようにヒト(動物)が暖色系の彩の食べ物に対して好ましい感情を抱くのは、遺伝的な要因も関係があると考えられる。
動くことのできない植物は、動物に実を食べて遠くへ運んでもらうために、種子が発芽能力を持つとその実を赤く甘くする。それまでは青くて、食べてもたいていはすっぱくてまずい味で、赤くなると甘くておいしい。このような色とおいしさの関係を、動物は進化の過程で身につけ、遺伝情報に組み込んだ2)というのである。
今回調べてみて、食欲と色彩には遺伝的要素から文化や生活まで、様々な要因が関係しているということを知り、食べるということに視覚はとても重要な役割を果たしているのだな、と感じた。
私は今回の講義でギムネマという植物の存在を知った。最初食べたときは甘かったチョコレートが、ギムネマの葉を口にした後に食べると、まったく甘くない。大好きなはずのチョコレートを「まずい!」と思ってしまった。またテレビでミラクルフルーツの実験をしているのを見て、私も試してみたいと思っていたので、今回実際にタブレットを使うことができて、酸っぱいものが甘くなるという不思議な体験ができて嬉しかった。実験をするまえは「どうせ少し変わるくらいだろうなぁ」と思っていたので、植物の力でこんなにも簡単に味覚が変化してしまうということを知って、ヒトの味覚とは繊細なものなのだなと感じた。この2つは肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防や、そういった病気の患者さんの食生活を豊かにするために使用できると思う。そういった病気を患われる方々は、きっと食べることが好きで、甘いものなども好んで食べていると思う。自分の好きな食べ物を我慢することはとてもつらいし、ストレスにもなる。なので、例えば、甘いものが欲しくなったらミラクルフルーツを使ってレモン汁を飲む。そうすれば甘い味を楽しめるし、ビタミンCなどのビタミンも摂取できる。またギムネマの葉をかじれば、今回私が感じたように、甘いものでも甘い味がしなくて「まずい!」と感じると思う。なので、食べたい、という気持ちが弱くなるのではないかと思う。
今回は特別にマビンロウのタブレットも頂いた。マビンロウとは中国特産の植物で、現地の少数民族の間では昔からその果実の種を、口を潤わせたり、すっきりさせたりするために食べる習慣があったようである。
今回マビンロウのタブレットを実際に使用してみたが、自分が思っていたよりも水が甘く感じられ、少し驚いた。しかし、牛乳や野菜ジュースを飲んでも甘くならなかったので、それはその飲み物自体の味が濃いからなのかな、と思った。年をとり、唾液の分泌が少なくなると虫歯や歯周病になりやすくなってしまう。これを防ぐためにマビンロウを利用してはどうかと私は思う。マビンロウ自体にも口を潤わせたり、すっきりさせたりする作用があるようだが、これをなめてから水を飲むと甘く感じられるので、普段あまり水を飲まないお年寄りでもおいしく水分摂取ができると思う。
今回の講義で様々な味覚実験をさせて頂いたが、この実験がうまくできたのは、私の味細胞がきちんと生まれ変わり、働いてくれているおかげであることを忘れてはいけない。私は、大学生になり一人暮らしを始めてから、インスタント食品やファーストフードを口にする機会がとても増えた。このような加工食品には、味細胞を形成するのに必要な亜鉛が含まれていない。よって、このような食生活を続けていると亜鉛不足による『味覚障害』を引き起こす可能性が高くなってしまう。
自分の食生活を振り返ってみると、味覚障害の原因を自ら作っているということに気が付き、もっと魚や肉、野菜など様々な食材を使った手料理を作り、豊かな食生活を送りたいと強く感じた。
今回の講義で、食べ物を食べて「おいしい」と感じることができる喜びを改めて認識した。栄養士としての勉強をしていくうえで、食品の栄養価や機能性を知り、理解していくことはとても大切である。しかし、食品の味を感じるための味覚や、「おいしい」と感じるための要因についてよく知ることも、「食」に関わる職業である栄養士には必要だと思う。今回学んだことを生かして、栄養士としての知識をもっとつけていきたいと感じた。
参考文献
1)色のおもしろ心理学2 ポーポー・プロダクション著 ソフトバンククリエイティブ株式会社(2007)
2)「おいしい」となぜ食べすぎるのか 山本隆著 PHP研究所(2004)