今回の講義を受けてヒトの不思議を改めて理解することができた。
味とはわずかな量の化学物質に対して生ずる感覚である。現在は種々の味のうち「甘味・苦味・酸味・塩味・うま味」の5つを「基本味」と称している。味を感知している器官は「味蕾」という味細胞の集合体である。実際に私たちが食物の味として感じているものは、適当な割合で組み合わされた五基本味に、においや食感・温度も加わった複雑な感覚である。また、味覚はほかの感覚と比べて個人差が大きく、年齢・性・一日のうちの時間・食生活などそのほかの条件によって感受性が大きく変わってくるものである。
今回の講義で動物はそれぞれ味蕾の数や位置の違いを知って驚いた。赤ちゃんが一番味蕾の数が多いのは自分を毒性のものから守るためであり、人間は生まれたときから自分を守る機能がきちんと備わっているのだと改めてすごいと思った。私は資料に載っていた動物以外の味蕾の数や位置について気になったので調べてみた。
魚類は普通味蕾の数が200くらいであるが、濁水の中で生息するコイやナマズは、味蕾を体表全体に分布させ、餌の小魚を全身で探知している特殊例である。ヘビなどの爬虫類や鳥類は食べ物を噛まずに丸飲みしているので味を感知する必要がなく、味蕾もない、または少ない。哺乳類の中でもやはり丸飲みするクジラ、単孔類、貧歯類(ナマケモノなど)は味蕾が少ない。肉食哺乳類は、無数の見た目は違いのない草の中から毒になるものと身体に必要な栄養とを判別するために味蕾が非常に発達している。ヒトは、肉食獣と草食獣の中間ぐらいの味蕾の数である。乳児期は舌だけでなく唇、口蓋、食道、あるいは内臓の一部にまで味蕾が広がっているが、成人では舌以外の味蕾は減っていく。老人はさらに全体に味蕾が著しく減少し、味に対する感度も低下する。高齢者が塩辛い味を好むのもこのためである。同じヒトでも年齢によって味蕾の数が大きく変化することがわかった。
近頃、若い人で味覚障害の人が増えている。これは加工食品やファーストフードに頼りすぎた現代社会の風習が原因でもある。亜鉛不足で味覚障害になってしまうのだが、亜鉛を多く含んでいるものは現在日本人があまり口にしなくなった日本食に多い。これから、もう一度日本食・食生活について見直し、少しでも味覚障害の若者が減るといいと思った。
今回の講義で初めて味覚修飾植物のミラクルフルーツとギムネマを食べてみて、人間の舌や脳を錯覚させる植物があるのだと知った。実際に自分で体験することで、味覚修飾植物を食べる前と食べた後で、食材の味がこんなにも変わるのかという驚きがあった。今回の講義で食べたミラクルフルーツの錠剤は食べやすいと思う。こうやって誰にでも食べやすく加工する手段も必要だと思った。現在では、日本で味覚修飾植物(ナツメ・ケンポナシを除く)を育てるのが難しいため大量生産は厳しいと言われているが、やはり糖尿病患者やその他の病気などに多少なりとも利用できる可能性がある味覚修飾植物を将来的にはもっと医療の現場で使用することができるようになるといいと思う。