私達は食事をする際に五感を働かせ、様々な情報を受け取っている。中でも食事の時に一番敏感になっているのが味覚である。では、どのようにして私達は味を情報として受け取っているのだろうか。
味は、舌全体に分布する、味蕾(taste bud)で判別されている。味蕾は乳頭の内部にあり、この味蕾は下だけでなく口内の上部と喉にも分布している。その内訳は舌に7割、口内の上部に3割となっている。
また、味蕾の分布場所、数、役割はそれぞれの生物によって異なっている。それはその生物が生きていくうえで効率のよい味蕾の分布場所、数などが進化の過程で変化してきたことによる。たとえばナマズは200,000個の味蕾が体中に分布しており、数でいえばヒトの味蕾の数の何十倍にもなる。こればナマズが濁った水の中で暮らしているため、障害物や敵や獲物を体表の味蕾を使って味として認識しているからである。ヒトでは口の中にしかない味蕾が、他の生物では全然違う数であったり、分布場所が異なることは非常に興味深い。味蕾の数、分布場所からその生物の生活様式や生物的特徴を推察することが可能であると思った。
味覚といっても様々な種類があり、先ほどの味蕾の分布場所、数のようにそれぞれの生物が好む味も異なってくる。野生の動物では本能的に自らの体に不足している(しがち)栄養素や必要な栄養素を多く含む食物をおいしいと感じる。これは非常によく出来た仕組みだと感じた。ヒトも同様に自分に不足したものを食べたいと思うし、自分自身もそういった経験がある。ヒトをはじめとした生物の体は生命維持のための本能に忠実に出来ているのだと思った。
ヒトが他の動物と異なる点は、食べ物をおいしく食べようとする点ではないかと思う。ヒトは同じ料理でもおいしい店を探したりするし、非常に味に敏感であると思う。味の探求を行っているのである。
そこで「味覚の操作」に焦点を当ててみようと思う。現在、味覚修飾植物に注目が集まっている。味受容体に働きかけることによって味覚機能を一時的に変化させるこの植物は、様々な分野で利用できるのではないだろうか。講義ではギムネマとミラクルフルーツの試食を行ったが、普段自分の認識している味と味覚修飾植物を食べた後では、まったく異なっていたので、そのギャップに戸惑ったと同時に非常に面白いと感じた。普段自分の認識している味に、絶対はないのだということと、味覚には必ず個人差があって、自分の感じている味が、他のヒトでは違うように感じられることもあるのだなぁと思った。ギムネマやミラクルフルーツなどの味覚修飾植物は感覚のみを変化させ、栄養成分には変化を与えないので、いろいろな目的に用いやすいと感じた。嗜好品のような一面も併せ持っていると思った。味覚を変化させ違う味を楽しむことも出来るし、その味を本来持つ食品を食べられない人にも甘みなどを味わってもらえると思った。これから先医療の現場はもちろん、もしかしたら近いうちに市販されている食品にも利用され始めるのではないだろうか。もっと身近な食品として味覚修飾植物を食べることが出来たらいいと思った。今回紹介していただいた植物以外にも味覚修飾植物が今後発見され、研究を進めていくことで私達の生活に役立てることが出来ればいいと思った。