参加者の御感想

2/8に実施した奈良女子大学 生活環境学部食物科学専攻 3回生、大学院人間文化研究科生活環境学専攻(修士課程)の受講者のレポートです。


  Aさん
 味の好みという点では確かにその人の育ってきた環境が大きく関わっていると思う。同じ料理を食べても美味しいと感じる人もいれば、まずいという人もいる。ピーマンの好きな子供がいれば嫌いな大人がいる。私は好き嫌いがなく、母は自分の食べさせた離乳食がよかったのだというが、確かにそうなのかもしれない。私は離乳食でバナナヨーグルトを食べさせられていたらしい。しかし妹はバナナヨーグルトを食べさせてもらっていなかった。すると何と現在、私は、バナナもヨーグルトも大好きだけれど、妹は大嫌いなのだ。育った環境の影響力はすごい。確かにそう考えても先生のおっしゃっていたファストフード店の戦略はすごい。
 甘い、すっぱい、塩辛い、苦い、だしがきいているという感覚は、ある程度の濃さがあれば味覚障害に関係なく、そして好みに関係なく、誰もが同じ感覚を持つであろうと思う。砂糖の塊を口にすれば誰もが甘い!という感想を持つだろうし、塩の塊ならしょっぱいというだろう。甘くて嫌い、甘くてすきという違いはあるだろうけれど。これは人間が安全に生きていくための感覚であり、その仕組みは味として感じることのできる化学物質と舌の上の受容体との結合によって感じるものだ。だから確かにこの鍵と鍵穴を利用することで新しい製品ができると思う。ミラクリンと糖尿病患者はもちろん授業で取り上げられたけれど、減塩食を必要とする人にうまく塩味の鍵穴を刺激することができればこれもいいと思う。しかし糖尿病患者が食べたいだけ食べられる大福を作るというようなことは不可能ではないだろうか。仮に酸味成分のローカロリーで、砂糖不使用の大福ができてミラクリンの働きで甘くすることができたとしても、始めに述べたように人は自分の知っている美味しい大福を求めるだろうと思う。私は栄養士の資格をもっているので、その観点から仮に患者さんにアドバイスするとしたら、糖尿病は決して食べてはいけない病気ではなく食べるものを選ぶ必要があるのだということを明確にして、週に1度大福を食べることにする、そしてその日はお米などを調節しよう提案したい。またミラクリンの問題点として先にミラクリンを舌全体に広げておいてから酸味のあるものを食べなければ、甘く感じないということがあるが、やはり一度に食べることができた方がいいと思う。そこで私が考えたことはミラクリンに酸味成分を予め結合させておくことはできないかと考えた。ミラクリンと酸味成分が合体した形で再現するように遺伝子レベルで操作できないかということだ。それとミラクリンのみを製品化するとして、ブレスケアのような仕組みにするよりも顆粒状にしたほうが舌全体に広がりやすいのではないかと考えた。最後に、私は以前からミラクリンに興味があったので、この講義はとても面白かったです。ありがとうございます。
 
 島村のコメント
 味覚障害の方は症状にもよりますが、加工食品のとり過ぎで味蕾が作られないと味は感じられなくなります。また、育ってきた環境等で1人1人の味覚は微妙に異なります。
 塩味を強く感じるにはうま味と組み合わせることで、塩分を減らしてもしょっぱさがある程度は強く感じられるようですが、味覚修飾植物・物質では発見されていません。塩分や糖分の摂りすぎのような自体を想定してできていない体ですから、このような時代が長く続けば、進化して塩味誘導物質のような植物が出てくる可能性はありますが。。。


  Bさん   
 今までの味覚の感じ方についての詳しい講義は受けたことがなかったので、食べ物の味は味蕾という部分で感じ、そこでの味の判別方法は鍵と鍵穴の関係に例えられる、という説明はとても分かりやすいものでした。味蕾の数については、人には多く存在すると知っていましたが、実際にはウサギや、牛、ナマズには、人より多くの味蕾が含まれているということに驚きました。しかし、ナマズは目が見えにくいため、味蕾を使って敵を感じることができる、という説明から、人はスーパーなどで安全な食糧を手に入れることが可能だけれど、他の動物はたくさん毒性を持ったものが、存在する自然環境の中で安全な食べ物を判断しなければならないことを考えると、多くの味蕾を持っているのも不思議ではないと思いました。
 また高校で味覚を感じる方法は味覚地図で習っていたため、これが間違いであったということにも驚きました。
 私にとって味覚とは本当に味を感じるだけで、美味しいものを美味しいと感じられるという部分、または美味しいと感じるものを作るためにどのようなものが必要なのかを考える部分、というようにしか思っていませんでした。講義で出てきたように、人間にとっての味覚とは「経験と学習」である、という言葉の通りだと思いました。
 一方、コアラやライオンを例に挙げた説明を聞いてとても驚いたのですが、自分達にとって美味しいものを食べているわけではなく、生きていくために役立つものを食べることが動物にとっての味覚であり、人の味覚とは全く違った役割を果たしているのだと感じました。
 ミラクルフルーツとギムネマは授業でも聞いた事があり、興味もあったので、味覚修飾植物であるということは知っていたのですが、他にも、クルクリゴ、ストロジン、ナツメ、ケンポナシが味覚修飾植物であり、ナツメ、ケンポナシについては日本にもあるということで、さらに興味がもてました。同じ味覚修飾物質でも作用に仕方には色々あり、ミラクリンは甘味を感じる味蕾の上を覆ってその間にさんがはいると甘く感じるが、ギムネマ酸は甘味を感じる味蕾にはまり込んでしまうため、甘味を感じなくなってしまう。このような仕組みについては聴いたことがなかったのでとてもいい勉強になりました。
 今回、ミラクルフルーツもギムネマも初めて食べたのですが、考えていた以上に味覚が変わり、本当にいい経験ができたと思います。難しくしてよく分からなかった味覚の仕組みについてもとても分かりやすく説明されていて、本当に興味深い講義でした。人にとっての美味しさが動物にとっての美味しさにつながるわけではなく、また文化の異なった人の美味しさが自分自身の美味しさと一致することもない。今まで考えたことのなかったこのようなことを含めて、味覚についてたくさんの事が学べてよかったと思います。

島村のコメント
 味覚地図は1902年にドイツのヘニングが論文を出しておりますが、その論文には各部分でしか味が感じないという表記ではなく、そこで感じやすいという内容です。無論、当時の技術範囲での論文ですので、もちろん正確性に欠く訳ですが、検証もされないまま、拡大解釈をされてしまったのが現状です。味覚修飾植物の実験でも間違っていることがよく分かると思います。


  Cさん
  食べ物の味を変えるのではなく、舌にイタズラをして一時的に味覚を変える物質を、味覚修飾物質と言う。私は味覚修飾物質の新しい利用法を考えた。

 その1 小児科での利用
 「良薬口に苦し」といわれるように、当たり前だが薬は苦い。しかしながら、講義で学んだように、子供は苦味に敏感なため、多くの子供は薬を飲むことを嫌がる。私の経験では、薬をオブラートに包んで、オブラートが溶けて中から苦い薬が溶け出してこないうちに一気に飲み込んでいた。しかし、この方法ではのどに詰まりそうになるし、オブラートの舌触りが気持ち悪いので、あまり好きではなかった。現在の小児科では乳幼児には甘い液状の薬を処方してくれるが、小学校高学年といっても、まだまだ味覚は子供。粉をのどに詰まらせることはないけれど、やはり苦い薬は飲みづらい。そこで、登場するのが味覚修飾物質だ。クルクリゴやストロジンを使う。両者は、水を甘く感じさせる作用があるので、これを使えば、薬を飲む水が甘く感じられ、薬の苦味が和らぐだろう。また、わざわざ甘い薬をつくらなくても、苦い薬をただ水に溶かしただけのものでも甘く感じることができる。近い将来、小児科で味覚修飾植物を栽培し、薬と共に薬袋にいれて処方するという光景が見られたら、面白いと思う。

 その2 お菓子への利用
 「練れば練るほど色が変わって・・・」というCMでおなじみのカネボウ「ねるねるねるね」は、視覚で楽しむお菓子である。決して美味しいものではないが、練ることで色が変わるという視覚的な驚きの体験が受けて、現在でも製造販売されている長寿商品だ。ならば、驚きの味覚体験も商品化できるのではないのだろうか、と私は考えた。おいしくなくても良い。驚ければよい。極端に言えば、講義で行った「ギムネマとチョコレート」の組み合わせでもいいと思う。しかし、これはあくまでも極論であって、まずすぎるともう一度買おうとは思わないので、ある程度美味しく、クセになる味にしなければならないが・・・。とにかく、味覚修飾物質により味覚体験はそれくらいの価値があるので、今後も様々な場面で活躍してほしいと思う。

 以上が、私が講義の間、わくわくと想像していたことだ。想像の中で、化学的におかしな点もあるかもしれないが、私はそれくらい味覚修飾物質に衝撃を受け、応用の可能性を感じた。
  
 島村のコメント
 斬新なアイデアで面白いと思います。味は五感をフルに使っているため、味覚修飾植物も視覚に訴えるものがあれば、ぜひ、アイデアを教えていただけたら幸いです。
 実際に実験において衝撃をうけ、応用の可能性を感じてくれたことに関しては嬉しく思います。

  Dさん
  ミラクルフルーツとギムネマについては、去年「食品化学」という授業で習って知っていたので、私は今回の特別講義をとても楽しみにしていました。去年の授業では、ミラクルフルーツから単離されるミラクリンと呼ばれる糖タンパク質を一旦口に含んだ後、酸っぱいものを食べると甘く感じるようになるが、それはpHの低下によって味覚受容体の構造が変化し、ミラクリンの糖部分と受容体が結合して、甘味を呈するためであると習いました。また、ギムネマについてはその成分であるギムネマ酸が甘味受容部位に吸着して甘味を感じなくさせるため甘い食べ物が甘く感じられなくなると習いました。実際に体験してみての感想は、ギムネマの方は、私が舌全体に成分を刷り込まなかったため、場合によって甘味を全く感じない部分と少し感じる部分とがありました。ミラクルフルーツにおいては、甘酸っぱくなって食べやすくなりました。特に、クエン酸は、ミラクルフルーツを食べる前はすっぱくてなめる程度しかできなかったものが、飲めるまでになったのは驚きでした。でも、私の予想では甘味を全く感じなくなるほど変わるものだと思っていたので意外です。
 ギムネマを食べた後、チョコレートを食べたときに、甘さを感じなくてもチョコレート独特の甘い香りがしてそれだけで甘い物を食べているような感じになりました。だから、食べ物を食べる上でにおいというものはとても重要であると改めて思いました。また、先生も講義で言っていたように人間には記憶というものがあるため、チョコレートの甘い香りをかいだだけで、きっと味が想像できるようになっているのだと思います。だから、私はそんなにまずくは感じませんでした。
 ギムネマやミラクルフルーツは、飽食である現代人の食生活において、これからどんどん有用になっていくと思います。特にギムネマの成分であるギムネマ酸については、舌で甘味を感じなくなるというだけでなく、小腸での糖分の吸収を阻害するという効果があるために、ダイエットや食事制限をしなければならないけど食べたい人に有効であると思います。また、ミラクルフルーツについても、甘いものが制限されている糖尿病の人に、本当な甘くない食べ物を甘く感じさせることができるので、有効であると思います。
 今回の講義で言っていたように、ミラクルフルーツやギムネマなどの不思議な味覚修飾物質は東南アジアやアフリカなど、熱帯地域原産のものが多いように思います。先生も言っていましたが、これらの地域には似たような効果を示す有用な植物がまだまだ存在すると思います。そして、これらの植物は天然由来であるため、有用な成分を取り出したとき、人工的に合成された化学物質により安全な食品添加物などが作れると思います。そういった点でもこの分野は面白く、研究する価値があると思います。
 
  
 島村のコメント
 私達は食べ物を食べる際に、未知の物を食べる以外は、ある程度味を予測して食べております。味は五感で判断しているというのは講義で話した通りですが、ギムネマの後のチョコレートは匂いは甘く、実際には甘くないという記憶との相違が出てきます。その分、驚きも大きかったと思います。
 


  Eさん
 1.講義内容に対する感想
 今回は実際に体験もでき、また詳しく講義を聴くことができたのでとても自分のためになった。本にのっている内容もいくつかでてきたが、大分前に読んだので忘れかけていたので復習になって良かった。講義の中で、人にとって美味しさとはの話で、人間は情報に左右されやすいということをおっしゃっていたが、まさにその通りだと思った。私自身情報に左右されていて、例えば小さいときトマトが大嫌いで一口も口にしなかったが、最近リコピンが含まれていてとても体にいいということを聴くと、嫌いだったはずのトマトを、「これは美味しい」といって自分に言い聞かせていると、だんだん美味しいと思い始めて今では好きな食べ物のひとつになった。また、逆に食べ過ぎると体に良くないと聴くと、急に食べなくなったりするからである。このように情報に左右されやすい人々の食行動に目をつけ、食品業界では偽装表示をしたり、広告や噂で美味しいと思い込ませたりしている。根拠のある情報ならばよいが、そうでもない情報に左右されないよう、自分の味覚を信じて生きて生きたいがなかなか難しいことだと思う。
 また、小さいときから慣れ親しんだ味は大きくなっても美味しく感じるという話があったが、近年女性が社会進出するに従い、母親が家でゆっくり食事を作る時間がなく、スーパーの惣菜などの出来合いのもので夕食を済ませたりして、それを小さい時から食べていると、味の濃いものに舌が慣れてしまうのであまり良くないように思う。私の親も共働きなので、小さいときの夕食は惣菜が多かった。幸い、私は自ら進んで、極力、薄味のものを食べるようにしていたが、弟はファストフードやコンビニのから揚げなどの味の濃い食物に舌が慣れてしまったので、薄味の食事をあまり食べたがらないので少し心配である。最近、テレビでマヨラーや偏食の人などの特集をしているが、そのような人の味覚は私には受け入れがたい。
 私は生きていく上での基本は、やはりきちんとした食生活であると考えているので、日頃から自分で進んでバランスの取れた食事をとるようにしていく必要があると思う。そうすることで丈夫で心身ともに健康な生活を送ることができる。そのためにも小さい頃に「食生活」について教育を受けておくことが、過程ではあまり教えられなくなっている現在、とても大切なことであると思う。しかし、そのような食生活をしていても、遺伝的に、インシュリンの分泌が少なくて、甘い物を食べたくても食べることができない人にとっては、今回体験したミラクルフルーツの存在はとてもありがたいものになるのではないかと思う。

 2.ミラクルフルーツ、ギムネマの体験について
 ギムネマの葉を初めて食べて、チョコレートや砂糖をなめたが、その味覚を変える効果はすごいと思ったが、美味しいはずのものが全然美味しくなくなってしまったので、複雑な気持ちになった。これに対して、ミラクルフルーツはそのまま食べるとすっぱいはずのレモン入りヨーグルトやクエン酸、グレープフルーツジュースがほんのりあまり美味しくなった。特にヨーグルトについては、普段、プレーンヨーグルトは酸っぱくて食べにくいので、砂糖やはちみつをたっぷり入れて食べているが、糖分が気になるので、ミラクルフルーツがあれば気にすることなく食べることができるのでいいなと思った。このような味覚修飾植物は熱帯植物なので、育てるのが大変であるが、遺伝子を改変するなどして寒い環境でも育つことができるようになれば、大量生産が可能になると思うが、そう簡単にはうまくいかないだろう。ミラクルフルーツを舌にこすり付ける作業が少し面倒なので、液状にしてスプレーのように舌にシュッシュッと振りかけるだけでよいようにすれば携帯用に利用でき、便利ではないかと思った。
 また最近、「黒酢」などが健康によいということでブームになっている。私も毎日欠かさず飲んでいるが、これは飲みやすいように酢以外にも砂糖もたくさん含まれている。その砂糖は余分なので、先ほどのスプレーを舌にかけることで黒酢そのものだけを美味しく飲めるようになればいいのではないかと思った。
 
 島村のコメント
 ミラクルフルーツを食べてから、酢を飲んでみると、りんごジュースになります。但し、薄めないとむせますので、ご注意下さい。
 家族内でも食生活の乱れの傾向があるようですので、ギムネマで味覚障害の疑似体験をすることで、食の大切さを再認識していただけると思います。ぜひ、残ったギムネマで実験してあげてください。